一見、意味が通らないかもしれない。運用資産がある年は18%上昇し、翌年は5%下落、そのまた翌年には9%上昇するといったことを繰り返していたら、とても成功しているようには思えない。
少なくとも短期的に見ればそうかもしれない。
だが投資を始めて10年から15年経つと、驚くべきことが起こりはじめる。平均的ペースで増えていた運用資産が年に数万ドル単位で変動するようになり、やがて月に、週に、1日に数万ドルも変動するようになる。市場の変動率が以前より大きくなったわけではない。複利の効果が出始めたのだ。
複利とは、単に利子に利子がつくことを意味する。その結果、資産は直線的ではなく指数関数的に増えていく。投資につく利子に利子がつき、そこにまた利子が積み重なっていく。
フランスの作家、マルセル・パニョルの小説に出てくる主人公、ジャン・ド・フロレットをイメージするといい。都会に住むジャンはプロバンスの田舎にある土地を相続し、ウサギ農家を始めようとする。すると隣人のウゴリンが忠告する。
「2羽のウサギが半年後には1000羽を超える。そのまま続ければ地獄を見るぞ。オーストラリアはそのせいでウサギに食い尽くされちまったんだ」
誰だって資産をジャン・ド・フロレットのウサギのように増やしたい。だが半年では足りない。私たちのウサギがオーストラリアを食い尽くすほど増えるには何年もかかる(オーストラリアには1859年に狩猟用のウサギが13羽持ち込まれた。それが今では2億羽以上に増えているのだ。ちなみに「利子(interest)」という言葉は、時間の経過とともに何倍にも増えていく家畜の子孫を意味するギリシャ語に由来する)。