孫氏がトランプ氏に約束した巨額投資、実現可能か孫氏は16日、フロリダ州にあるトランプ氏の邸宅マールアラーゴで開かれた記者会見で、1000億ドルの投資を約束した(英語音声、英語字幕あり)Photo: Evan Vucci/AP

 ハイテク投資の大物である孫正義氏は、ドナルド・トランプ次期米大統領に贈り物をした。それは、米国で人工知能(AI)および関連技術に1000億ドル(約15兆4000億円)を投じるという約束だ。

 孫氏は16日、フロリダ州にあるトランプ氏の邸宅マールアラーゴで行われた記者会見で同氏の隣に立ち、「トランプ(次期)大統領はダブルダウン(リスクを取るタイプ)の大統領だ」と述べた。これは、孫氏が今回約束した投資の規模が8年前の同様のイベントで約束した500億ドルの2倍に当たることに言及したものだ。

 言及されなかった事実がある。それは、ハイテク産業のコングロマリット、ソフトバンクグループ(SBG)の会長兼社長である孫氏には現在、1000億ドルの資金がないことだ。今回発表した投資計画を実行するには、孫氏は大規模な資金調達、巨額の新規負債、あるいはSBGの保有資産の大量売却などを組み合わせて資金を集める必要がある。

 多くの企業トップや投資家らが相次いでトランプ氏に敬意を表し、公の場で惜しみない称賛の声を上げている。そんな中、孫氏は飛び抜けたインパクトを与えたかったようだ。

 先週、トランプ次期大統領の就任基金に100万ドルを寄付することに同意した企業やCEOが続出した。その中にはメタ・プラットフォームズ、アマゾン・ドット・コム、オープンAIの創設者サム・アルトマン氏が含まれている。アルトマン氏はかつて、トランプ氏が示す原則は「米国にとって受け入れられない脅威」だと述べていた。一方、米誌タイムのオーナーで、セールスフォース・ドットコムの最高経営責任者(CEO)を務めるマーク・ベニオフ氏は、トランプ氏が同誌の「今年の人」に選ばれたことに祝意を表し、「わが国にとって非常に有望な出来事だ」と語った。

 トランプ次期政権による規制の動きによっては、ハイテク企業の価値が大きく変動する可能性がある。この業界は、世界貿易やM&A(合併・買収)、海外投資、暗号資産(仮想通貨)などの分野を巡る連邦政府の政策に大きく左右される。多くのハイテク企業は政府機関と数十億ドル規模の契約を結んでおり、トランプ氏は大統領1期目にソーシャルメディア上で複数のハイテク企業幹部を公然と批判していた。