児童写真はイメージです Photo:PIXTA

2000年代から政府主導で推し進められた、教育に市場原理を取り入れる新自由主義的改革。大阪でも橋下徹大阪府知事(当時)が大胆に改革を実行したが、その結果は今ひとつ。むしろ競争の激化によって定員割れが続き、特別な支援を必要とする子どもたちのセーフティネットとして機能していた学校が続々と閉校に追い込まれる結果となってしまった。※本稿は、高田一宏『新自由主義と教育改革 大阪から問う』(岩波新書)の一部を抜粋・編集したものです。

高校授業料の無償化で
公立高校が定員割れに

 国が「高等学校等就学支援金」の制度をつくって所得制限つきで公立高校の授業料を無償化したのは2010年度、私立高校の授業料の無償化措置を始めたのは2014年度である。大阪ではそれに先駆けて2010年度に「私立高等学校等授業料支援補助金」が設けられ、私立高校の授業料無償化が進んだ。なお、2024年度からは、公立・私立を問わず所得制限なしの授業料完全無償化が段階的に導入されている。

 入試制度改革や授業料無償化は、地域(学区)、学校の種類(普通科、専門学科、総合学科)、設置者(公立と私立)の枠を取り払って、生徒に幅広い選択肢を提供するために行われたとされる。だが、誰もが自由に選択できるわけではないし、選択には弊害が伴うこともある。

 生徒の選択肢の拡大は、学校にとっては入学者獲得競争が激しくなることを意味した。

 私立高校の授業料無償化措置が拡充され、公立と私立の7:3の入学定員枠がなくなった2011年度の入試では、公立高校全体で1400人あまりの定員割れが起きた。定員割れした高校は全日制・定時制を合わせて60校に上った。その後、公立高校の定員割れは、いったんは落ちついた。

 だが、この10年あまりで、授業料無償化措置の拡充によって入学者が私立高校へと誘導され、定員割れの続く公立高校は「再編整備」の対象になった。2023年度までに募集停止となった公立高校は17校にのぼる。ついに2024年度の入試では公立高校の約半数にあたる70校が定員割れに陥った(定時制・通信制は除く)。

学業やスポーツでの実績などの
「経営努力」を求められる私立高校

 私立高校も安穏としてはいられない。2011年からは私立高校の助成金を生徒1人あたり(パーヘッド)の単価にもとづいて配分することが原則となった。学校設備や教職員の人件費などは規模の大小にかかわらず、ある程度の額を確保しなければいけないから、小規模校ほど生徒1人あたりの教育費は高くなりがちである。パーヘッド制はそうした事情を考慮しない。入学者を集めやすい学校がますます有利になる制度である。