競争の激化によって
教育の質は向上したのか

 公立と私立の競争の結果、公立と私立の入学者の割合はおよそ6:4になった。公立と私立の「学校勢力図」は塗り変わったのである。今後、所得制限のない授業料完全無償化措置が続けば、私学のシェアはさらに大きくなるだろう。近い将来、公立と私立の入学者の比率は逆転するかもしれない。

 このように全体としては私学の存在感が増しているのだが、詳しくみると公立高校の中でも競争の勝者と敗者のコントラストが目立ってきた。少子・高齢化が進んでいることを考えると、これまで通りの数と規模の高校を維持することは現実的でない。高校の再編は避けられない課題である。問題はどのような高校が再編の対象になったかである。

「生徒獲得」の実績を端的に示しているのが志願倍率である。難関大学への進学に力を入れる「文理学科」は多くの志願者を集め、高い入試倍率を維持している。2024年度の文理学科10校の平均倍率は1.32倍である(最高で1.52倍、最低で1.11倍)。

 一方、再編整備計画で「セーフティネットの役割を担う高校」と位置づけられ、中学校までの学習内容の学び直しを重視した「エンパワメントスクール」や「ステップスクール」は入学者確保に苦戦している。これら8校の平均倍率は0.95倍である(最高で1.19倍、最低で0.78倍)。今後、教育課程のさらなる改編や統廃合は避けられそうにない。セーフティネットはほころびかけているのだ。

 こんなことでは、到底、「全体として大阪の高校教育の質が格段に向上」したとはいえない。あるいは定員割れになるのは学校の「質が悪い」からであり、そうした高校が淘汰されれば全体として高校教育の「質が向上する」とでも言いたかったのだろうか。しかし、高校が淘汰されて困るのは、そうした高校によって支えられるはずだった生徒たちである。

インクルーシブな高校が
競争で閉校に追い込まれる

 2021年3月に再編整備の検討が始まった高校は13校ある。うち、3校は「エンパワメントスクール」、1校は日本語の指導が必要な生徒の特別入試を実施する高校、1校は高校と高等支援学校が連携して障害のある生徒と障害のない生徒がともに学ぶ仕組みをもつ「共生推進校」だった。

 結局、13校のうち3校は2023年度の入試を最後に募集停止となった。次に挙げるのは、募集停止が決まった高校の学校長あいさつである。