抗菌薬と手術、小児の虫垂炎に
最善の治療法はどちら?
過去数十年にわたり、小児の虫垂炎(いわゆる盲腸)に対しては、手術による虫垂の切除が一般的な治療とされてきた。しかし、新たな研究で、手術ではなく抗菌薬を使う治療が、ほとんどの症例で最善のアプローチであることが示唆された。
この研究では、合併症のない虫垂炎(単純性虫垂炎)の治療に抗菌薬を使用することで、痛みが軽減し、学校を休む日数も減ることが示されたという。米ネムール小児医療センターのPeter Minneci氏らによるこの研究結果は、「Journal of the American College of Surgeons」に11月19日掲載された。
本研究の背景情報によると、米国では、小児の入院理由として5番目に多いのが虫垂炎であり、また、入院中の小児に対して行われる外科手術の中で最も多いのが虫垂切除術だという。
Minneci氏らは、2015年5月から2018年10月の間に中西部の小児病院で単純性虫垂炎の治療を受けた7〜17歳の小児1068人のデータを分析し、1年間の追跡期間を通じて、抗菌薬による非手術的管理と手術的管理(緊急腹腔鏡下虫垂切除)の費用対効果を比較した。
対象者の親には、子どもの虫垂を切除するか、手術回避の可否を確認するために少なくとも24時間の抗菌薬による点滴治療を行うかの選択肢が与えられていた。370人(35%)は抗菌薬による非手術的な管理、698人(65%)は手術的管理を選んでいた。
費用対効果の評価では、増分費用効果比(ICER)を主な指標として採用した。これは、非手術的管理と手術的管理の費用の差を健康アウトカムの差で割ったもので、1単位の質調整生存年(QALY)または障害調整生存年(DALY)を得るために必要な追加費用を意味する。1QALYまたは1DALY当たりの支払い意思額(WTP、支払っても良いと思う最大金額)を10万ドル(1ドル150円換算で1500万円)に設定し、この閾値を基準として費用対効果を評価した。