加納典明は『青春の蹉跌』(74年)の時に週刊誌の仕事で萩原や桃井かおりのスチールに模した写真を撮ったことがあり、それ以来萩原とは友人関係になった。今回の『傷天』のスチール撮影も、萩原から依頼されたもので、ちょくちょく現場に撮りに行っていたという(『STUDIO VOICE』2000年8月号、加納典明インタビュー)。
タイトルバックのラストには、オサムがカメラに向けて牛乳をぶっかけるというサプライズがあった。だがこれは、現在残っている映像ではカットされている。
山本俊輔、佐藤洋笑 著
最後にはその牛乳をビシャッ!とカメラにぶちまけて、真っ白になった画面に真っ赤な字で、
『傷だらけの天使』
とタイトルが出る。ところが、スポンサーに牛乳の会社があったのさ。だから最後だけ切っちゃってね、ぶちまける寸前でストップモーション、というあの形になったわけ。(前掲『ショーケン』)
「最後に牛乳をぶっかけるのはショーケンのアドリブです。後で映像をスポンサーに見せたんですけど評判が悪くてカットになりました」(工藤英博)
ちなみに、牛乳会社がスポンサーというのは、萩原の記憶違いだが、やはり良識を求めるテレビの世界で敬遠されたのは間違いない。なお、本放送当時、牛乳をかける場面は存在していたと当時からのファンは振り返る。いつしか、その場面はストップモーションに差し替えられたのだと。後年、過去の作品を取り上げる回顧番組でその場面が放送された。熱狂的なファンは宝物のようにそのVTRを保存している。