萩原健一と水谷豊のコンビで人気を博した、テレビドラマ『傷だらけの天使』。放送から半世紀経った今も愛されている。印象的なのはショーケンが豪快に朝食をとるオープニング。このオープニングは、ショーケンのアイデアであり、なおかつ幻のバージョンがあったのだという。※本稿は、山本俊輔、佐藤洋笑『永遠なる「傷だらけの天使」』(集英社新書)の一部を抜粋・編集したものです。
トマトや魚肉ソーセージを
豪快にむさぼり食うショーケン
ペントハウスの窓から朝陽が差し込み、電車の音が聞こえてくる。水中メガネをかけ、ヘッドフォンをして眠っていた木暮修(こぐれおさむ。萩原健一が演じる主人公・探偵事務所の調査員)が目を覚ます。オサムはむっくりと寝床から起き上がり、朝食になりそうな食材を探して、冷蔵庫を漁る。
そして取り出したトマトやクラッカーやコンビーフなどをテーブルに並べ、豪快にかぶりついていく。新聞紙を前掛け代わりにして、魚肉ソーセージを吸うように食べ、牛乳瓶の蓋を口で開けてひと口飲む、またコンビーフにかぶりつく、そしてまた牛乳を飲む─。
放送当時から今に至るまで、数多くの若者たちが“モノマネ”をしてきた、この伝説のオープニング・タイトルバックから、『傷だらけの天使』の撮影は開始された。
時は1974(昭和49)年7月初旬。深作欣二組(第3話「ヌードダンサーに愛の炎を」)と恩地日出夫組(第7話「自動車泥棒にラブソングを」)がほぼ同時にクランク・イン。オープニング映像は、恩地組の本編に先立って代々木のペントハウスで撮影が行われた。
「タイトルバックというのは、その後のいろいろな監督のいろいろなストーリーを邪魔しないようにしないといけない。だからショーケンが朝起きて冷蔵庫から食べ物を出して食べる、そういう日常的なことをやっておけば、本編がどんなストーリーで、どんな監督が演出をしても、タイトルバックと齟齬は起こさないだろうということですね。これに関しては、ショーケンと恩地さんが事前にかなり話をしていました」(工藤英博※編集部注:元「傷だらけの天使」プロデューサー)
「ここで朝メシを食う!」とショーケン
オープニングシーンの撮影始まる
撮影を担当したのは、黒澤明組の撮影助手を長らく務め、前年に『野獣狩り』(須川栄三監督)で撮影技師としてデビューしていた木村大作。テレビ映画はこれが初登板である。