「裕次郎さんの“声”が…」中山秀征が初告白、ドラマ『静かなるドン』主役時の不思議体験とは?写真はイメージです Photo:PIXTA

バラエティで大活躍していた中山秀征に、伝説の漫画『静かなるドン』のドラマ化での主役のオファーが突然やってきた。放送時間は、石原裕次郎主演で刑事ドラマの金字塔と言われる『太陽にほえろ!』がかつて放送されていたのと同じ金曜夜8時のゴールデンタイム。コアなファンも多いヒット作の待望のテレビドラマ化で、中山秀征が選ばれた意外な理由とは。※本稿は、中山秀征『いばらない生き方』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。

伝説の人気漫画のドラマ化
なぜ主役に抜擢されたのか

「昼は3枚目、夜は3代目」。1994年10月から放送された日本テレビ系ドラマ『静かなるドン』のキャッチフレーズです。

 この作品で僕は、「昼は女性下着メーカーの落ちこぼれデザイナー、夜は新鮮組の3代目総長」という、型破りな主人公・近藤静也を演じました。

 新田たつお先生の原作漫画は、当時、既に大人気で、のちに週刊誌連載1000回の金字塔を打ち立てた伝説的な作品。1991年には香川照之さん主演でVシネマにもなり、こちらも人気シリーズに。

 コアなファンも多いヒット作の待望のテレビドラマ化だったわけですが、「なぜタレントの中山秀征が主役に?」と驚きや疑問の声も上がって……。

 その疑問は、原作とVシネマ、両方の大ファンだった僕も同じように抱いていました。

「とても光栄ですが、なぜ僕なんでしょうか?」。プロデューサーに尋ねると、「ヤクザができる役者は大勢いるけど、下着デザイナーを演じられる奴はなかなかいなくてね。それができるのがヒデなんだよ」と、僕を抜擢した一番の理由が“音楽ライブ”だったという意外な事実を教えてくれました。

ゴールデンタイムのドラマだが
オファー快諾とはならなかった

 当時、僕は「ロックンロールショー」と銘打ったライブを定期的に開いていました。革ジャン、リーゼントヘアのロカビリースタイルで、大好きなプレスリーや、エディ・コクランのナンバーを歌っていたのです。

 その姿を見たプロデューサーは、普段、僕がバラエティで見せる“表の顔”とのギャップに驚いてくれたようで「『静かなるドン』は、ヒデにぴったりだ」と、即決してくれたようです。

 テレビの仕事とは関係なく、純粋に「好きだから」と始めたライブが、結果的に、ドラマの主役という大きな仕事につながるのですから、つくづく芸能界とは不思議な世界です。誰がどこで見ているか分からない。

 届いた企画書を見ると、放送時間は、あの『太陽にほえろ!』が放映されていた“伝統の金曜夜8時”。芸能界一の石原裕次郎ファンを自任する僕にとって、裕次郎さんと同じテレビ局、同じ時間のドラマに主演できるなんて、これ以上ない幸せです。

 もちろんオファー快諾……かというと、実はそうはいかない理由がありました。

 当時の僕は、バラエティのレギュラーが週に14本あり、ドラマの仕事を受けるなら、撮影スケジュールの関係で半分近く番組を降板しなければならなかったのです。