ギャラの高い役者は使えないが
個性派俳優がドラマを盛り上げた
「キャスティングに関しては、西村晃さんとか金子信雄さんとか、レギュラーにしたかったんですけど、ギャラが高いから削ったんですよね。磯野さんも泣く泣くね。でもその代わりゲスト主役に旬な女優を入れようということで、ちょっと工夫したんですよ」(工藤英博)
そして、桃井かおり、関根恵子など女優と有島一郎、小松方正など芸達者なゲストに出演してもらって、役者のキャラクターを生かしたストーリーを考えた。ショーケンとユタカの個性がゲストの個性と絡み合うとストーリーは弾んだように展開して行く。(前掲『東宝見聞録』)
まさに涙ぐましい努力の数々。これらの改革案が実際にはどのように進められていったのかを検証してみよう。
まず重要なのはやはり、作品の骨組みとなる脚本である。番組開始当初は市川森一をメインライターとして押し出していたものの、前述したように執筆が遅れて本番に間に合わなくなることも多く、ほかのライターたちをシリーズに導入することが急務となった。
「市川森一さんは決めゼリフが決まってから、それまでの話を書く手法の人だから。『このセリフを言わせたい』っていうために全てを書くっていう先生なんですよ。だからメインのセリフが決まらないと書けないんですよね」(岩崎純 ※編集部注:第18話などのチーフ助監督)
「シリーズ後半は新人のライターとか、日テレや東宝に出入りしていた若手の人たちも使おうとなりました。磯野さんにしたら厄介な脚本を書いてこないで、予算にもはまるようにっていうこともあったと思うんです。それはいいことだと思いましたね。渡邉由自くんなんかも素敵な感性を持っている作家だと思いましたから」(工藤英博)
プロデューサーのこだわりで
最初からシナリオの書き直しも
シリーズ途中から参加した脚本家たちは、清水欣也プロデューサーの厳しい指導のもと、急ピッチでシナリオの作成に取り組んだ。
「清水さんはシナリオを読んで、脚本家に『これ書き直してください』ってバーッと言う迫力がすごいですからね。ここはこうで、ここはこうしないと成立しないとか、全部1ページ目から書き直させるんです。僕だったらあれほどは言えないなあと。あれはすごかったですね」(工藤英博)
そして、予算的な制約から、場面設定やシチュエーションといった要素があらかじめ決められた中でシナリオを書かなければいけないというケースも多く、なおかつ常に質の高い内容が求められるのは、若手脚本家たちには苦労の種だった。