自分は何も持っていない」「いつも他人を妬んでしまう」「毎日がつまらない」――誰しも一度は感じたことのある、やり場のない鬱屈した思い。そんな感情に寄り添ってくれるのが、イラストエッセイ『ぼくにはなにもない 愛蔵版』。小説家だけではなく、大人気ゲーム実況グループ「三人称」の鉄塔としても活躍する賽助氏も本書の読者だ。この記事では本の感想も交えながら、賽助氏が考える「心の持ち方や生き方」について語ってもらった。(構成/ダイヤモンド社・林拓馬)

「いつも忙しそうな人」が余力を残すためにやっている「うまい方法」とは?『ぼくにはなにもない 愛蔵版』より

いつも疲れてしまうとき、余力を残すコツは?

仕事や家庭、勉強で疲れている人に「余力を残すコツ」をお伝えするとして、僕がまず思うのは「頑張りすぎないこと」です。

これ、当たり前のように聞こえるかもしれませんが、実際にはなかなかできていない人が多いんじゃないかと思います。

特に真面目な人ほど「やらなきゃ」と思いすぎて、気づいたら全力を出し切って疲れ果ててしまうことがあるんですよね。

だから、どこで力を抜くか、どのタイミングで手放すかを考えることが大事なんじゃないかと思います。

たとえば、「ここは今自分が頑張らなくてもいいや」って思えるポイントを見つけるのがいいと思います。

誰かに任せられることは任せるとか、別に完璧じゃなくてもいいところはサッと済ませてしまうとか。

力の入れどころと抜きどころを見極めることが、余力を残す上ではすごく大事な気がします。

僕自身、仕事や何かをしているときに、どうしても行き詰まることがあります。

たとえばエッセイを書こうとして、何をどう考えても全然書けないとき。

そういうときって、本当に無理に頑張っても答えが出ないんですよね。

そんなときは「もう書かなくていいや」と思って、その時間を別のことに使います。

ぼーっとしたり、散歩したり、ちょっと他の作業をしたり。

そうすると、しばらくしてからまた向き合ったときに、考えが少し変わっていて意外とスムーズに書けたりするんです。

だから、「向き合いすぎない」というのが意外とコツかもしれないですね。

少し離れるとか、完全に手放してみるとか。

手放すことで、逆に新しい角度から物事を見られるようになることも多いです。

それから、僕自身の生活でも「全部を完璧にやろう」と思わないようにしています。

周りから見ると、「あれもやって、これもやって、忙しそうですね」と言われることもあるのですが、実際には結構手放しまくってます(笑)。

ひとつのことをやりすぎて行き詰まる前に、他のことに切り替えたり、少し休んだりして、また元に戻ってくる。そんなサイクルを自然に作っている感じですね。

だから、もし「疲れてるけど、やらなきゃ」って思うことがあったら、その「やらなきゃ」と思っていることを一度手放してみるのも手だと思います。

思い切って休むとか、別のことをするとか、何かを後回しにすることが悪いわけじゃない。

むしろ、その時間があるからこそ、もう一度取り組むときに新しい気持ちで進められることも多いんですよね。

疲れてるときこそ、「手放すこと」を積極的にやってみる。

それが案外、余力を残す一番のコツなんじゃないかなと思います。

(本記事は『ぼくにはなにもない 愛蔵版』の感想をふまえた賽助氏へのインタビューをもとに作成しています)

「いつも忙しそうな人」が余力を残すためにやっている「うまい方法」とは?
賽助(さいすけ)
作家。埼玉県さいたま市育ち。大学にて演劇を専攻。ゲーム実況グループ「三人称」のひとり、「鉄塔」名義でも活動中。著書に『はるなつふゆと七福神』『君と夏が、鉄塔の上』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)『今日もぼっちです。』『今日もぼっちです。2』(以上、ホーム社)、『手持ちのカードで、(なんとか)生きてます。』(河出書房新社)がある。