「何気ない一言」が致命傷に…税務署が《申告漏れ》を見つける、意外な方法とは?写真はイメージです Photo:PIXTA

大切な遺産を家族で仲良く分け合うはずが……相続時は家族間の「ちょっとした会話」によって、思わぬ税務調査を呼び込む可能性があります。本記事ではふと漏らした一言がきっかけとなり、税務調査に至った事例を紹介します。借用書や振込み記録がなくても、税務署が申告漏れと認定する、その意外な方法とは?(ライター 岩田いく実、監修/中井学税理士事務所 中井学)

「兄に3000万円貸している」
母が生前に漏らした“何気ない一言”

 70代後半の母親が亡くなり、相続をすることになった松岡文夫さん・恭子さん(いずれも仮名)のご兄妹。父はすでに他界しており、相続人は兄妹2人のみでした。

 亡くなった母の遺産は預貯金と有価証券が中心で、合計はおよそ6000万円。相続税申告の対象となりましたが、極端に高額な資産額ではなかったため、円満に遺産分割協議を行い分割する予定でした。兄妹は以前から関係が良好でしたが、恭子さんは生前に母から聞いていたある言葉を、葬儀の際に思い出していました。

「お兄ちゃんには昔、3000万円ぐらい貸してるのよ」。恭子さんは離婚し、実家に戻ってきた際に母からそんな言葉を聞いたことがあったのです。その後、母が貸したとされる3000万円について恭子さんは母にも兄にも追及はしませんでした。

 もしも本当に母が生前にお金を貸しているなら、母の遺産には「貸付金(兄から見れば借入金)」が存在するはずです。兄が母に返していないなら、母の財産の一部として相続財産に含めなければならず、遺産総額は9000万円に変わります。

遺産分割協議で兄に確認すると…
「そんな事実はない!」と激高

 恭子さんは疑問を感じ、遺産分割協議時に文夫さんへ率直に切り出しました。「母から聞いていたんだけど、兄さんに3000万円貸してたって話って本当?」。

 すると文夫さんは、「そんな事実はない!」と激高。恭子さんは母のタンスなどに借用書や振り込み記録など証拠となるものが眠っていないか探しましたが、見つかりませんでした。

 遺産分割協議が延びてしまうと相続税申告の期限(被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10カ月以内)を過ぎてしまいます。そこで、恭子さんはやむを得ず遺産6000万円を2人で均等に分けて、相続税申告書を提出することで合意しました。

 一見、円満に終わった相続。しかし、この話は終わっていなかったのです。