実質賃金「4カ月連続マイナス」、いまだ賃金と物価の好循環と肯定する“日銀の罪”Photo:JIJI

11月勤労統計、実質賃金は前年同月比0.3%減
価格転嫁で物価上昇は賃上げ上回る

 1月9日に公表された毎月勤労統計速報によると、2024年11月の実質資金の対前年増加率(従業員5人以上の事業所)は前年同月比0.3%減だった。

 名目賃金にあたる現金給与総額は同3.0%増と35カ月連続プラスだったが、消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)がそれを上回って3.4%上昇した。

 実質賃金の対前年増加率は、24年の5月までは57カ月連続でマイナスの伸びになっていた後、6~7月には、ボーナス増加の影響でプラスになった(ベアと違ってボーナスは、将来企業業績が悪化した場合には引き下げることができるため、業績が良い時期には大きく増加する傾向がある)。

 しかしその後、8月、9月とマイナスに戻り、10月は速報段階で横ばいだったが数値が下方改定されたため、4カ月連続のマイナスになった。

 12月には増加率がプラスになる可能性があるが、そうなったとしても、これは6~7月の場合と同じようにボーナスの影響だろう。

 日本銀行は春闘での高い賃上げが続くなかでの物価上昇を、「賃金と物価の好循環」と肯定的に評価してきた。

 しかし 名目賃金が上がっている主因は、企業の価格転嫁によるものだ。このままでは、賃金が上がっても物価がそれ以上に上がり実質賃金が減る「悪循環」の状況がひどくなるだろう。