市場の予想を覆しての日本銀行の追加利上げは円高急伸と日経平均株価の乱高下を生んだ。円安是正に動かないことへの批判の高まりに遅ればせながらの対応だったが、市場の不安定化で金融正常化のシナリオにも暗雲が漂う。(ダイヤモンド編集部特任編集委員 西井泰之)
「円安放置」の批判にようやく
だが円高急伸、株式市場は乱高下
日本銀行の「追加利上げ」を機に、ドル円相場は、一時1ドル=141円台まで円高が一気に進み、日経平均株価は、8月5、6日は過去最大の暴落と急騰という乱高下となった。
7日には、内田眞一日銀副総裁が、講演先で「金融資本市場が不安定な状況で利上げをすることはない」と発言、収束を図ったが、日経平均株価は8日にまた下落。8月に入り6営業日連続で1日の値幅が1000円を超えており、市場の不安定化が収まる見通しは立っていない。
7月の金融政策決定会合では、国債買い入れを2016年1~3月までに現在の約半分の「月3兆円程度」まで減らす減額計画とともに、政策金利(無担保オーバーナイト金利の誘導目標)を0~0.10%から0.25%に引き上げることが決まった。
実質賃金の下落が続き個人消費が低迷する状況で、金利上昇につながる国債買い入れ減額との「同時」の政策金利引き上げには慎重な見方が市場にあった中でのサプライズ利上げだった。
物価上昇を加速させてきた円安の原因として低利政策に目が向けられてきた中で、日銀は「円安放置」の批判に遅ればせながら対応した。黒田東彦総裁時代の大規模緩和で円安を志向し続けた政策についても植田和男総裁が区切りをつけた形だが、思わぬ展開を生んだ。