TBS日曜劇場「御上先生」(主演・松坂桃李)1話では、東大志望の人も多い偏差値の高い私立学校で、こんなふうに言うシーンがあります。
テストでいい点を取って、いい大学に行って、他の人よりもちょっといい生活をする。そんなのは、エリートでもなんでもない。ただの、上級国民予備軍だ
では、御上先生と同じように、世間一般的に将来「エリート」と呼ばれるような人たちが育つ学校の先生はどのように考えているのでしょうか?「エリート」とはなんなのか、どんな教育を行っているのかについて、考察していきたいと思います。今回は、『5科目50年分10000問を分析した東大生のテストテクニック大全』(ダイヤモンド社)の著者であり、「御上先生」の教育監修をつとめる西岡壱誠氏が、駒場東邦高校の国語教員である小原広行先生にお話を伺いました。

日曜劇場「御上先生」で描かれる“エリート”を育てる教師。実際の現場ではどんな教育がされている?Photo: Adobe Stock

生徒たちが『良い子化』している

――まず、所感として、最近の生徒たちを見ていて感じることはありますか?

小原広行先生(以下、小原):単純に過去と比較できるものではないのですが、最近自分が教えている中学生を見ていると、良い意味だけでなく悪い意味でも『素直』だな、と感じることがあります。こちらの話に対して反駁(はんばく)することなく、『そうなんですね、わかりました』と言うだけで、『そんなに素直に聞き入れていいの?』と感じることがあります。素直というのは美徳でもあるわけですが、主体的に考えて、自分の意見を構築してみようという気概が感じられず、幼い感じがしています。

――なるほど、そうした生徒たちの『良い子化現象』はあるかもしれません。2022年にも『先生、どうかみんなの前で褒めないでください』(東洋経済新報社)という本が発売されて話題になりましたね。そうした生徒たちの『良い子化』は中学受験も関わっているのではないかと感じるのですが、中学受験を課している駒場東邦で教えられている先生は、その点はどのようにお考えですか?

小原:そうですね。やはり、中学受験が関わっている部分も大きいのではないかと思うことがあります。中学受験は、一人で乗り越えられないものですよね。まだ小学生ですから、そのシステムに関しても、受験勉強に関しても、どうしても周りの人を頼らざるを得ないですよね。そうすると、一番身近で安心できる存在として『親』を頼ります。そうなると、『頼る』ことが習慣化してしまうんだろうな、と思います。

もちろん頼ることが悪いことだと言う気はないんですが、しかし生徒たちと接していると、頼りすぎだな、と感じることがあります。偏差値が高い生徒であっても、『親がなんと言うか』から逆算して進路を決めたりしている場合があったりします

高校3年生になっても、どんなに偏差値が高くなっていても、『親と相談して…』と言いつつ、『親が言うからこの大学を目指す』という生徒もいるのは事実です。