インド株は資金流出圧力で下振れ、経済成長伸び悩みに通貨安でインフレ懸念Photo:PIXTA

経済成長の鈍化もあり、景気対策を打ち出した中国に資金が向かい、インドの株価はさえない。トランプ米新政権の政策によるドル高期待で通貨ルピーも下落基調。インフレ懸念もくすぶるなどインド経済は苦境にある。(第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 西濵 徹)

海外への資金流出圧力に
さらされるインドの金融市場

 2024年11月の米大統領選においてトランプ氏が勝利したことを受けて、同氏の主張する政策に加え、関税を『ディール(取引)』の材料に駆使する手法を理由に米国のインフレが高止まりするとの見方が強まっている。

 こうしたことから、米FRB(連邦準備制度理事会)は24年後半にインフレ鈍化を理由に利下げに動いたものの、先行きについては利下げペースの鈍化、ないし利下げが困難になるとの見方が強まり、米ドル高の動きが再燃している。

 さらに、トランプ米次期政権が関税の再強化に動くとの思惑は、米中摩擦のさらなる激化を招くとともに、底入れが期待された世界貿易を再び萎縮させるとの見方につながり、世界経済の足かせとなる懸念が高まっている。

 こうした動きは、経済構造面で相対的に輸出依存度が高い新興国にとって景気の足かせとなることが想定され、株式も下振れするなど資金流出圧力にさらされている。

 他方、経済構造面で外需依存度が相対的に低いインドについては、こうした悪影響を受けにくいと見込まれるものの、足元のインド金融市場は海外への資金流出圧力にさらされるなど難しい状況に直面している。

 次ページでは、インドの金融市場の動向を分析するとともに経済の見通しについても検証する。