FRBが今年、利上げに転じたら?Photo:Alex Wong/gettyimages

 米連邦準備制度理事会(FRB)が今年利上げに転じたら、どれほど恥ずかしいことになるだろうか。昨年の積極的な利下げ(直近では12月)が間違いだったと認め、方向転換することは可能だろうか。

 投資家はこうしたシナリオを検討し始めている。CMEグループのFedWatchツールによると、政策金利であるフェデラルファンド金利(FF金利)の先物が織り込む年内の利上げ確率はゼロのままだが、利上げの可能性を巡る議論は活発に行われている。

 これは単に、経済がなお過熱しているかどうか、あるいは第2次トランプ政権の関税・移民・減税政策がインフレを引き起こすかどうかの問題ではない(いずれも重要ではあるが)。投資家にとって議論の中心にあるのは「利上げのハードルは利下げのハードルよりも高いのか」という問題だ。言い換えれば、FRBが利上げに踏み切るには、利下げよりも多くの根拠を必要とするのか、ということだ。

 歴史を振り返ると、FRBは、大きな変更を行う際にはそれをかなり前から示唆し、利上げを開始する前にはそれが正しいと確信できるまで時間をかける、という傾向がある。

 連邦公開市場委員会(FOMC)後に政策声明を発表する慣行が始まった1994年以降、FRBが1年未満で利下げから利上げに転じたのは1回だけだ。その1回は特殊なケースだった。FRBは1998年後半、米ヘッジファンド「ロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)」の破綻によってウォール街が危機に陥る恐れがあったため、大幅利下げを実施。全てが落ち着きを取り戻したことが明らかになると、再び利上げを開始した。当時はドットコムバブルに伴うインフレが急速に進行していたが、それでも利上げ転換には7カ月を要した。