「あなたは人生というゲームのルールを知っていますか?」――そう語るのは、人気著者の山口周さん。20年以上コンサルティング業界に身を置き、そこで企業に対して使ってきた経営戦略を、意識的に自身の人生にも応用してきました。その内容をまとめたのが、『人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』。「仕事ばかりでプライベートが悲惨な状態…」「40代で中年の危機にぶつかった…」「自分には欠点だらけで自分に自信が持てない…」こうした人生のさまざまな問題に「経営学」で合理的に答えを出す、まったく新しい生き方の本です。この記事では、本書より一部を抜粋・編集します。
こういう時代は「臆病」が競争優位になる
一般的なイメージと違い、「臆病」というのは、実は非常に重要なコンピテンシーなのです。これは大規模な調査研究からも明らかにされています。
例えば経営学者のジョセフ・ラフィーとジー・フェンは、5000人以上の起業家に対して「本業を続けながら起業したか?」「本業を止めて起業に専念したか?」という質問調査を行ったところ、本業を続けながらサイドプロジェクトとして起業した人の方が、成功確率がずっと高いということを明らかにしたのです。
皆さんが投資家の立場で、二人の候補者のどちらかに投資しなければならないという状況を考えてください。
一方の「本業を続けながら起業する人」が、なんとも腰の据わらない、弱々しい印象を与える一方で、「本業を止めて起業に専念する人」は、いかにも潔く、自信に満ちている印象を与えるのではないでしょうか。投資家としては、後者を選びたくなるのが人情というものでしょう。しかし、実際の結果はその真逆だったのです。
これは一見すると不可解な結果のように思われるかもしれませんが、よく考えてみると実は合理的な理由があります。
すなわち、リスクを嫌って安定した収入をもたらしてくれる本業を続けながら起業した人ほど、副業で大胆なリスクを取ることができた一方で、リスクを厭わず、大胆に起業に専念した人ほど、実際にはリスクが取れずに小粒な取り組みに終始する傾向があり、失敗しているということです。