成長の止まった人がハマる「明確すぎる目標」の落とし穴写真はイメージです Photo:PIXTA

日本の教育では、学業や部活など、何かと「目標」を決めがちだ。だが、ビジネスの世界において、1つの目標に固執することは、部下の成長を妨げかねないという。部下が失敗を恐れず、自由に成長し続けるために大切なこととは何か。本稿は片岡裕司、山中健司著『なぜ部下は不安で不満で無関心なのか メンバーの「育つ力」を育てるマネジメント』(日経BP日本経済新聞出版)より一部を抜粋・編集したものです。

「強み」ではなく
「持ち味」を活かす

 マネジメント関連の書籍では、「弱みを克服するマネジメントではなく、強みを伸ばし、活かすことを目指しましょう」と書かれていることが多いでしょう。でも、実はそれでは足りないのです。強みを活かして仕事ができるようになっても、どこかで自分の弱みが気になり、本当の自信が生まれてこないからです。

 ここでは、「持ち味」というキーワードを使います。強みも弱みもその源泉は同じで、それがその人の「持ち味」だということです。

 たとえば、私(片岡)はとてもせっかちです。専門用語でいうと切迫動機タイプといい、スケジュールに対してのこだわりが強く、何事もスケジュール通りに進められるよう仕事を組み立てるタイプです。ですので、計画性やプロジェクトの推進力、周囲へ行動を促していくという強みがあります。一方で、途中での計画変更や、スケジュールを守れないマイペースな人にイライラしたり、中身の本質追求より、納期からの逆算での品質を優先してしまう弱みがあります。

 このように強みと弱みは表裏一体、コインの裏表なのです。強みと弱みとを切り分けるのではなく、「持ち味」として統合的に捉えることで自己肯定感を育みやすくなります。

 また自分の持ち味の副反応としての弱みの行動は、弱みではなく強みの先にあるものと捉えると受け止めやすく、対策をとることに抵抗感が低くなります。結果として、強みをさらに伸ばした形で弱みも克服できるようになっていくのです。

「内発的動機」ではなく
「内面化動機」を引き出す

「内発的動機付けを大切にしよう」というのが今のマネジメントの主流です。しかし、私は世の中が内発的動機にとらわれすぎているのではないかと考えています。

 学生時代からキャリア教育や社会貢献教育がされるようになった現在、「夢がない自分、社会への貢献意識が低い自分はダメな人間だ」と自らにレッテル貼りする若者が増えています。心からやりたいことがないのに、表面上は意識の高いふりをする人も多くいて、これでは本末転倒です。