メンバーの将来的なビジョンの明確化はマネジャーの重要な仕事の1つだ。しかし、人材教育コンサルティングのアチーブメント取締役営業本部長であり、マネジメント講座のトレーナーでもある橋本拓也氏は「マネジャーが『君は将来どうなりたいの?」と質問をしても効果が薄い」と指摘する。では、どのような関わり方をすれば良いのか?メンバーの目的意識を促す9つの実践例を紹介する。※本稿は、橋本拓也『部下をもったらいちばん最初に読む本』(アチーブメント出版)の一部を抜粋・編集したものです。
メンバーの目的を明確にするための
マネジャーの関わり方とは?
メンバーに目的を考えてもらおうとマネジャーが「君の働く目的は何?」「君は将来どうなりたいの?」と質問をしても目の覚めるような回答をもらえる可能性は低いです。
「君は将来どうなりたいの?」は非常に回答の幅が広いオープンクエスチョンと呼ばれるものです。明確な目的・目標を持っていない限りは、誰でも答えに躊躇します。
以前、私はこの「漠然とした質問を繰り返す」ことによって失敗をしたことがあります。
あるメンバーが仕事に対するモチベーションが上がらず、明確な目的や目標も持っていませんでした。私はそのメンバーの目的を少しでも明確にしようと、「これからどうしていくの?」「本当はどうなりたいの?」など面談で質問を繰り返してしまいました。
しかしこのメンバーはそもそも自分の中で働く目的が曖昧でした。
そんなメンバーに「どうなりたいの?」と尋ね続けることは、本人にとっても苦痛だったのでしょう。
「わからないので答えられません」と、逆に自信を落とすような面談となってしまいました。
これは今思うと、私の質問のレパートリーが少なく、一辺倒な質問しかできなかったことが問題でした。また質問以外にも、メンバーの目的・目標を明確にする支援の方法はたくさんあることを当時はまだ知りませんでした。
ある研究では、世の中の95%の人は願望が曖昧だと言います。
ですから、そもそも目的が明確ではない人のほうが多いことを心づもりにして関わりを持つようにしましょう。
では、どのような関わりを持てばよいのか?
いくつか実践例をお伝えします。
まずはマネジャーが
自身の目的を自己開示する
最初から質問ばかりになると、尋問のようになってしまい相手も逆に怖くなったり、心を閉じてしまうこともあります。
まずは「マネジャー自身はどんな目的を持って働いているのか?」「この仕事にどんな意味を感じているのか?」「なぜこの会社に入り、何を成し遂げたいと思ったのか?」について自己開示することも有効です。
例えば私の場合は、アチーブメントに入社し、現在も働き続けている理由をメンバーに伝えてきました。