当然ですが、その人がいつも成長しようと考えていることが「育つ力」のベースになります。だからこそ「成長」の喜びを分かち合うことが大事です。難しいかもしれないがチャレンジする。新しいやり方を工夫する。そんな成長することをやめられないメンバーに育てていくのがこのステップです。そうしたメンバーに恵まれた組織にいることがどんなに楽しいことか、ぜひ想像してみてください。
「明確に目標を絞る」のではなく、
多様な視点から「可能性」を広げる
私たちは人生の中で、「明確な目標」が大事と繰り返しいわれてきたのではないでしょうか?私自身、中学受験に始まり、大学受験、大学受験の際には大学だけではなく、その先の職業的目標を明確にしたほうがより力が湧いてくるといわれて、付け焼刃でいろいろな目標を書かされてきました。
明確な目標の持つ強烈な力は否定しません。大谷翔平選手のようなプロスポーツ選手や、オリンピックを目指すアスリートは明確な目標を立て、その達成のためにたくさんのことを犠牲にしていくことが求められると思います。
しかし、明確な目標を持つことのデメリットもあります。
1つは、ビジネスの世界では明確な目標が持てるような時代ではなくなりつつあるということです。ある分野のトップの技術者になろうと思ってもその技術があっという間に陳腐化してしまうというのが現実です。

もう1つは、明確な目標はその人のそれ以外の可能性を消してしまうということです。一人ひとりのキャリア、人生、才能にはいろいろな可能性があり、またチャンスもあります。一方、明確な目標はそれらをすべてかき消す力があります。
ロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン経営学教授は、書籍『LIFE SHIFT2』の中で人生100年時代を生き抜くカギを「自己像の拡大」と指摘しています。
自分にはこんな可能性もあんな可能性もあるのではないか、とたくさんの自分の可能性を持つことです。自分の可能性を狭く持つメンバーが多い中、マネジャーがその壁を打破し、視野と可能性を広げて成長軌道に導いてあげることが、「育つ力」を持ち続けるエンジンとなるのです。