【マーチソン・フォールズ国立公園(ウガンダ)】適切なハゲワシを選ぶことがその任務では重要になる。
コシジロハゲワシは確実に巣に戻るので信頼できる。目つきは鋭く、ウガンダのマーチソン・フォールズ国立公園(以下、マーチソン)の広大なサバンナの上空をいつも通り旋回する。密猟が疑われるケースがあればパークレンジャーに警報を送るハイテク追跡装置も装着している。
マダラハゲワシも頭がはげていて目つきは鋭いが、話は別だ。追跡装置を背中に取り付けようとする人の目をつつかなかったとしても、すぐにウガンダ上空を離れ、コンゴやスーダン、あるいはチャドへと姿を消してしまうだろう。
「彼らはそこでもっと良さそうな死骸を見つけるのだろう」とウガンダ野生生物局のフィールド業務副責任者のチャールズ・トゥムウェシゲ氏は推測する。「彼らはわれわれの問題に関心がない」
東アフリカでは違法な狩猟と闘う新たな取り組みとして、一日中動物の死骸を探し回る本能を持つハゲワシを対象に人工知能(AI)を活用している。
マーチソンでは数十年にわたりゾウやカバ、アフリカスイギュウといった野生動物に対する密猟が横行していたが、危機的状況からの回復にハゲワシを利用するプロジェクトが一役買っている。AIを搭載した追跡装置によって、レンジャーはハゲワシの行動に関するリアルタイムの情報を得られる。例えば、ライオンが放置していったアンテロープの一部をハゲワシが食べたり、わなにかかったカバを巡って数日間騒ぎ続けたりする様子から、密猟者の行動を推測することができる。