【チューリヒ】ドナルド・トランプ氏の2度目の政権に世界が身構える中で、多くの人が恐れ、一部の人が願っているのは、同氏の政権返り咲きによって米国の例外主義が終わりを迎えることだ。しかし筆者は真逆だと考える。彼の目覚ましい政治的復活は、米国の文化的な力の持続的な強さを示している。この強さによって米国は2世紀以上にわたり、ダイナミックな資本主義が必然的にもたらす混乱や混沌(こんとん)を他に例を見ないほど快く受け入れてきた。
トランプ氏の「MAGA(米国を再び偉大に)」連合は、世界の大部分で対立する二つのグループを少なくとも一時的に結集させている。一つは、アイデンティティーや、自分が属する社会の伝統的価値を守ろうとする怒れるポピュリストのグループ。もう一つは、規制緩和や、多くのブルーカラー労働者に取って代わる可能性が高い最先端技術の急速な展開を強く求める、企業家精神にあふれたハイテク業界の大物たちのグループだ。
自身の連合内のこうした対立勢力を結束させ続けるためには、トランプ氏の巧みなフットワークが必要だが、それは不可能ではない。米国のポピュリストは通常、欧州などのポピュリストよりも強く資本主義を支持している。また米国のハイテク業界の大物たちには、伝統的な業界や企業のリーダーほど、MAGA政策のポピュリスト的な要素に反対する理由がない。トランプ氏の支持層とハイテク分野の仲間が同じ意見を持つ問題は多くあり、意見が異なるものにおいても、多くの観察者が予想する以上に妥協の余地がある。