現役大統領の逮捕は、初めてのこと
増田 韓国の尹錫悦(ユンソンニヨル)大統領が韓国憲政史上、初めて現役大統領として逮捕されました。1月15日、尹大統領は大統領公邸で拘束直前に撮影した国民向けのビデオメッセージで、「不法で無効な手続きだ」と不満を示しながらも、「流血事態を避けたいという気持ち」のために拘束に応じることとしたと述べています。その後、逮捕となりました。
池上 大統領警護庁の警護員に守られて公邸に立てこもっていましたが、内乱容疑での拘束、そして逮捕となりました。警護員も武器を持っていますが、陸軍の一部も指揮下に入っており、警察との間で血が流れる可能性があった。それは避けたいということでしょう。
増田 尹大統領は昨年12月に発令した「非常戒厳」(戒厳令)が非難され、国会で弾劾訴追を受け権限が停止されています。戒厳令で戒厳軍が中央選挙管理委員会の庁舎に侵入するなど、大きな混乱を招きました。
弾劾訴追の妥当性については、憲法裁判所で争われています。ここで弾劾が有効と認められれば、大統領の職を失うことになりますが、そうなるとは限りません。
池上 かつて韓国では盧武鉉(ノムヒヨン)大統領が弾劾され、一時大統領の職務が停止されましたが、憲法裁判所が却下したために大統領に復帰しました。尹大統領もその可能性に懸けているのでしょう。
増田 大統領は戒厳令を出す権限を持っていますが、あくまでも非常事態に限られています。今回、大統領が非常事態だと判断する正当な理由があったのでしょうか。