マスク氏、いかにしてドイツ極右政党支持に至ったかPhoto:Sean Gallup/gettyimages

 米国の富豪でドナルド・トランプ氏の友人であるイーロン・マスク氏は昨年12月、自身のソーシャルメディアXに6語から成るメッセージを投稿し、ドイツの政界に衝撃を与えた。

「ドイツを救えるのはAfDだけだ」。マスク氏はこう投稿し、極右のポピュリスト政党「ドイツのための選択肢(AfD)」への支持を表明した。AfDは不法移民の追放や欧州連合(EU)からの離脱、ロシアへの一段の接近を訴えている。

 AfDはマスク氏がドイツに工場を建設する際に反対運動を展開し、幹部の一部は熱烈な反米主義者だ。だがマスク氏は、トランプ大統領、JD・バンス副大統領らとトランプ氏の邸宅「マールアラーゴ」で会談した後、AfDを支持した。この会談内容に詳しい人物2人によると、トランプ、バンス、マスクの3氏はドイツの主流派政党の幹部を強く非難したという。

 このエピソードから分かるのは、トランプ氏や同氏の側近たちによる不用意な発言が、マスク氏が支配するソーシャルメディアと彼自身の膨大な数のフォロワーによって増幅され、いかに世界中に影響を及ぼしているかということだ。マスク氏はXを使って欧州の政治支配層を揺さぶろうとしているが、Xを通じて交流する起業家らと話す中で、ドイツや同国の指導者たちに幻滅していたことが、マスク氏の公の場での発言や同氏と話した人たちの話からうかがえる。だが、AfDを後押しするというマスク氏の公然の取り組みは、昨年12月半ばのマールアラーゴでの会合直後から始まった。