日本銀行は1月の政策決定会合で利上げに踏み切った。しかし、経済の現況は12月の前会合時に挙げた要件を満たしてはいない。利上げのチャンスを逃すまいと前のめりになった日銀の姿が浮かび上がる。(ダイヤモンド編集部 竹田孝洋)
利上げに慎重な姿勢を
見せていた植田日銀総裁
日本銀行は、1月24日に政策決定会合を開き、政策金利を0.25%から0.5%に引き上げた。
2024年12月の政策決定会合では日銀は利上げを見送った。その理由から考えると、今回の利上げには唐突感がある。
植田和男総裁は25年春闘での賃上げ動向とドナルド・トランプ米大統領の政策の影響を見極めることを見送りの理由として挙げた。「あとワンノッチ欲しい」とも発言し、利上げに対して慎重な姿勢を見せた。
24年7月末の利上げ後、8月に円高が急激に進行し、株価が急落したことが日銀のトラウマになっている。利上げで市場が混乱し、景気が腰砕けするような事態は避けたい。それが12月の利上げを巡る慎重な姿勢につながっている。
では、1月に利上げに踏み切ったのだから利上げに向けた条件は満たされたのだろうか。
植田総裁は1月会合の会見で賃上げについては「春闘は昨年に続きしっかりとした賃上げの実施が見込まれると判断した」と発言した。会合前に支店長会議が開かれており、そこで賃上げの感触をつかんだということなのだろうが、やや勇み足の感は否めないだろう。
トランプ氏の政策については、「大きな方向性は示されつつあるが、国際金融資本市場は落ち着いている」と語った。市場が落ち着いているからといって、それはトランプ氏の政策の影響が大きくないということと同義ではない。
こう見ると、現在の経済状況は12月の会合時の要件を満たしているとは言い難い。
しかし、年明け以降、氷見野良三副総裁、植田総裁が講演で「1月会合で利上げを議論する」と発言し、利上げの地ならしに動いた。日銀は利上げできるタイミングを逸したくなかったと推測される。