Illustration: Matt Chase for WSJIllustration: Matt Chase for WSJ

 米国は建国から250年の間に、豊かさが広く行き渡った時代と、所得格差が急拡大した「金ぴか時代」のような時代を交互に繰り返してきた。近年は再び格差が広がっている。米国勢調査局によると、2024年には所得分布上位10%の世帯が下位10%の世帯の12.6倍の収入を得ており、1976年の8.7倍から上昇した。

 米国が歴史の次の段階に入り、人工知能(AI)が経済を変革し労働力を再編しようとする中で、所得格差を縮小する最善の方法――あるいは、そもそもそれを望むべきかどうか――について、5人の経済学者に意見を求めた。彼らの提言は、超富裕層への課税や職業訓練への投資から、政府の介入を抑えて市場に機会創出を委ねるものまで、幅広い政策領域に及んでいる。

 5人の寄稿に共通しているのは、米国を建国以来の理想である「機会の国」にしたいという強い思いで、それはほとんどの米国人が賛同できる点だ。この5人の経済学者のように具体的な方法については意見が分かれるとしても、その思い自体への異論は少ないだろう。

サエズ氏:億万長者に課税せよ

 米国の格差拡大全体の中で最も顕著な動きは、億万長者層の台頭だ。米経済誌フォーブスが発表する米富豪400人の長者番付によると、米国で最も裕福な上位0.0002%(現在の上位400人)の実質資産は1982年以降に15倍に増えたが、米国の世帯平均収入は同期間の伸びが2倍に届かなかった。AIブームはここ数年で、億万長者の資産をさらに膨らませた。

 これほど莫大(ばくだい)な利益を得ているにもかかわらず、億万長者層への課税は軽い。企業利益に対する法人税率が低い上、利益を企業内に留保することで個人所得税を回避できるためだ。試算によると、億万長者層が全経済的所得に対して支払う税金の合計は24%に過ぎず、全体の平均税率30%を下回っている。