日本でラウンドアバウトが普及しない理由
冒頭で紹介した通り、ラウンドアバウトは日本国内ではまだまだ少ないのが現状。2014年9月に施行された改正道路交通法から10年以上経過した今も普及が進んでいない最大の理由は、ラウンドアバウトを設置するために必要なスペースの確保に課題があるといわれています。ラウンドアバウトには、中央島となる広い円型の敷地が必要となりますが、最小限のスペースでつくられた既存の十字型交差点では、いくら改造してもラウンドアバウトに十分な広さを確保することはできません。
また、国土交通省では、ラウンドアバウトを導入する場所の目安として、1日当たりの総流入交通量を1万台未満としています。単純計算だと、1時間あたりおよそ416台ですので、比較的交通量が少ない道といえ、道が狭いながらも交通量は多い都心の道路や、複数車線があるような道路はこの目安に当てはまらない、ということになります。おそらく、交通量の多い場所では、やはり通常の信号機による交通流制御のほうが適しているという判断なのでしょう。
実際、筆者が今回通行してきた2カ所もそうでした。横浜エリアのラウンドアバウトは、休日には信号機を付けるほどの交通量がない場所で、鷺沼のラウンドアバウトも住宅街へ向かう道につくられたもの。いずれも、「流れを止めずに、車速を落として通行する」という、ラウンドアバウトのよさが、発揮されているように感じられました。
ラウンドアバウトの普及が進まない理由にはもう一つ、地域住民の理解が得られにくい、という点もあるようです。国土交通省は2012年11月に、旧軽井沢にある六本辻交差点(6枝の変形交差点かつ無信号)をラウンドアバウトに改良し、実験前後での走行挙動の変化や、利用者の意識を調査していますが、「良くなった」と答えた住人が半数以上(52%)いた一方で、約4分の1の住人は「悪くなった」(26%)と回答したそう。「通行方法がわからない」「今まで一時停止をせず通過できていたのに面倒になった」「住民の意見を反映せずに事業を実施した」「クルマが一時停止をしないので危険度が増した(自転車利用者)」「(六本辻では)交差点が狭すぎる」等々の意見が寄せられたといいます。
国土交通省と警察庁は、2022年にまとめた「ラウンドアバウトのすすめ」のなかで、ラウンドアバウト導入のメリットとして、「生活道路の交通安全対策」「道路の機能変化の印象付け」「多枝交差点の交通整序化」「積雪寒冷地の交差点としての導入」「まちのシンボルとして活用」などを挙げています。ラウンドアバウト導入に際しては、地域住民に説明会などで理解を得る努力はもちろん必要ですが、ユーザーとしても、自身の使い勝手だけを求めるのではなく、メリットデメリットをしっかりと理解をした上で、意見をしたいところ。まだまだ導入事例は少ないラウンドアバウトですが、事故のリスクを減らすことができる優れたシステムとして、運転する側、歩行者側、双方の立場で理解していきたいものです。