「登録済み未使用車」をご存じでしょうか。新車登録が済んでいるにもかかわらず、実際には使われていないクルマです。いわゆる「未使用の中古車」であり、「新古車」とも呼ばれます。こうした車両は中古車市場で安く手に入りますが、「ほぼ新車なのに安い」という「うまい話」には裏があります。(モータージャーナリスト 諸星陽一)
全く使われていないクルマが
中古車として売られる不思議
クルマを購入する際、少しでも価格を抑えようと、新車ではなく中古車を選択肢に含める人も多いでしょう。
今の時代は、わざわざ中古車専門店に足を運ばなくても、中古車情報サイトで気になるモデルを探せます。その上、金額・年式・走行距離など、さまざまな条件で検索結果をソート(並べ替え)し、安いクルマや新しいクルマを選べます。
その際に「ちょっと珍しいクルマ」が見つかることがあります。新車登録を済ませていながら、ステータスが「未走行」となっている車両です。全く使われていないクルマが中古車として売られているのです。
この不思議な現象は、なぜ起きるのでしょうか――。
今回はそうした「未使用の中古車」(いわゆる新古車、正式名称は登録済み未使用車)が市場に出回る理由と、そのメリット・デメリットについて解説していきます。
なお、軽自動車のナンバープレートを取得する際、正式には「登録」ではなく「届出」を行いますが、本稿では便宜上「登録」と呼びます。
では本題に移りましょう。言わずもがなですが、クルマは自動車メーカーが製造します。そして、そのクルマをディーラーが仕入れてユーザーに販売します。
ディーラーがクルマを売って収益を得る仕組みは、ちょっと複雑です。経費などを無視して話をすると、基本的には「売り値-仕入れ値」が利益になるのですが、ここにディーラーからの販売奨励金(通称インセンティブ、マージン、リベートなど)が加算される場合があります。
各自動車メーカーは、ディーラーにやる気を出させ、より多くのクルマを売ってもらえるよう「ご褒美」を支給しているというわけです。