海外でよく見かける、信号機のない環状交差点「ラウンドアバウト」(Roundabout)。「フランス・パリの凱旋門の周りにある、円形の道路」といえば、「ああ、あれね」と思い浮かぶ人も多いのではないでしょうか。ラウンドアバウトは、英国では1960年代から調査研究が行われ、1990年代から導入を開始、一気に普及しました。しかし日本では、全国で140カ所程度しかありません(国土交通省、2022年時点)。なぜ日本ではラウンドアバウトが普及しないのでしょうか?(自動車ジャーナリスト 吉川賢一)
信号不要、環境に優しく大事故も起こりにくい「ラウンドアバウト」
2つの道路が交わる場所を、信号機を用いて交通の流れを制御する一般的な交差点とは異なり、交差点の中心に円形の島のようなスペースを設け、その周囲を回り込むように一方通行で周回し、行きたい方向へ離脱する交差点形式であるラウンドアバウト(環状交差点)。日本のように左側通行の場合は右周り、欧米のように右側通行の場合は左回りです。任意の方向に離脱できるため、入ってきた道路へ戻ることもできます。欧州を中心に、北米や東南アジアでも普及しています。
信号機がなく、安全が確保できれば、一時停止することなく徐行が可能なので、赤信号による待ち時間が減少します。これによって信号停止によるアイドリング時間削減が期待でき、環境負荷軽減への貢献や、多枝交差点など複雑な形状の交差点でも導入可能。また、クルマは常に片側(日本だと右側)からしかやって来ないため安全確認が簡単で、必ずハンドルを切った状態で進行するために自然と車速が低く抑えられ、万が一衝突事故が起きても被害は大きくになりにくいのがメリットです。信号がないので、災害などに伴う停電にも強いのもポイントです。
日本にも昔から近いものが存在していた
日本でも円型形状の交差点は昔から存在しており、「ロータリー交差点」「円型交差点」などと呼ばれていましたが、2014年9月に施行された改正道路交通法によって、正式名称が「環状交差点」となり、法的に整備され始めました。国土交通省によると、この法律施行前に配備されたラウンドアバウトには一時停止の標識があるものもあり、今後は経過を確認したうえで、必要な措置を講じたあと廃止にする計画とのことです。