恋愛として人を好きになって、
その先に何がしたい?

編集者 「友達止まり」とかそういう言葉がありますよね。

能町 ああ、言いますよね。

森山 でも、ドリカムの曲で、恋人と別れるっていうことは自分にとって一番の友達を失うってことだっていう歌があって(「なんて恋したんだろ」)。なるほど、と思ったことがあるんですよね。最高の恋人というのは親友であるみたいな規範もある気がするし、そういうリアリティを持っている人もいるんじゃないかな。

……なんて他人事のように言ってますけど、僕も自分に関してはそうで、自分のパートナーは最高の親友だっていう気持ちもある。恋愛対象でももちろんあるんですけど。

能町 あ、そうなんですか。そういう人がいるのはちょっと心強いかも(笑)。だいたい、みんな、恋愛として人を好きになって、その先に何がしたいんですかね。デートだけじゃなくて、セックスしたいとか、あの人の子供を産みたいとか、言う人もいるわけじゃないですか。でも私は、すごく好きな人とは「たくさん会って仲良く話したい」くらいが最高到達点なんですよ。だから、友達で別にいいってことになりますよね。

 セックスについてはまったく別でいいんです。同性(女性)とセックスをしたいとは思わないけど、男性であれば、その好きな人としても楽しいと思うし、次の日にまるで別の人としてもいい。セックスとしての楽しみがあればそれでいい。私の好きな人がまったく別の人とセックスしててもあまり気にならない。私より仲良くしていたら嫉妬するかもしれないけど。

森山 博士論文で日本のゲイについて研究したときに、少し据わりは悪いんですが「特権的な他者とのつながり」という言葉を使ったんです(注)。「恋人」「パートナー」「その場限りのセックスの相手」「セックスフレンド」とかって、違いはあるんだけれどはっきりは分けられないはずだから、ひとまとまりにして考えてみようと思って。

注 森山至貴『「ゲイコミュニティ」の社会学』勁草書房、2012年