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世の中には「恋愛」が「友情」よりも特別だとされている風潮がある。しかし、本当にそうだろうか?友情と違うものとは言えない恋愛感情や、性欲と連動しない恋愛感情もある。世間にもてはやされる「ピンとこない恋愛」について、森山至貴・能町みね子が語る。※本稿は、森山至貴・能町みね子『慣れろ、おちょくれ、踏み外せ 性と身体をめぐるクィアな対話』(朝日出版社)の一部を抜粋・編集したものです。

友情と恋愛はどう違うのか
いまだにわからない……

編集者 それこそ素朴な話になるかもしれませんが、お聞きしたいです。恋愛は友情とは違うものとされていて、なぜか友情より特別なものみたいになっていると思うんですけど……。

能町みね子 うーん、中学生みたいな話題ですけど、実は私にとってそれはものすごく重大なテーマで。友情と恋愛はどう違うのか、私はいまだにまったくわかってないんですよ。

 たぶん世間的には、友情っていう目盛りと、恋愛っていう目盛りを、人は別個に持ってることになってるはず。「友情値」が上がっていって、このラインを超えると恋愛になる……ということではないですよね。恋愛は恋愛で、まったく別の基準がある、らしい。

 でも、私のなかには、友情も恋愛も含めて、ひとつの「好き」の目盛りしかない気がするんです。だから、その目盛りがぐーっと上がっていって「この人、けっこう好きだなあ」って思うことはありますけど、それが恋愛なのかどうかというと、うーん……。「友人としてとても好き」と、「恋人としてとても好き」の差がよくわからない。そこがずっと、世間に納得いかないところです。

森山至貴 ははは、世間に納得いかない(笑)。

能町 性欲が伴ったら恋愛、というわけでもないですよね。自分自身、性欲はある。さっきのたとえで言えば、性欲の目盛りもあると思う。でも、それと、友情のような恋愛のような私の「好き」の目盛りとはほとんど相関関係がない気がする。性欲の目盛りが上がったことによってもうひとつの目盛りも上がる、ということが、どうもなさそうなんです。

 なので、なんか……みんなこれってどう?って問いかけたい(笑)。自分のあり方に、あまり名前がついていなくて、ずっとそこはふわふわしています。アロマンティック(編集部注:他人に恋愛感情を感じない人や指向)なのかと言われたらそんな気もするし。

森山 一般的には友情と恋愛の二本柱みたいなものがあるんですかね。友情がいくら上がったからって恋愛にはならないわけですよね。