いまシリコンバレーをはじめ、世界で「ストイシズム」の教えが爆発的に広がっている。日本でも、ストイックな生き方が身につく『STOIC 人生の教科書ストイシズム』(ブリタニー・ポラット著、花塚恵訳)がついに刊行。佐藤優氏が「大きな理想を獲得するには禁欲が必要だ。この逆説の神髄をつかんだ者が勝利する」と評する一冊だ。同書の刊行に寄せて、ライターの小川晶子さんに寄稿いただいた。(ダイヤモンド社書籍編集局)

【必読】頭はよくても「嫌われる人」の話し方・ワースト1Photo: Adobe Stock

自分の価値観に則して生きる

もしそれが正しくないことであれば、するな。
事実でないことであれば、口にするな。
(マルクス・アウレリウス『自省録』)
――『STOIC 人生の教科書ストイシズム』より

賢そうな言葉で「印象操作」をする

 マルクス・アウレリウスはこう言うが、完全に「正しくないことはせず、事実でないことは口にしない」人なんてどこにもいないのではないだろうか。

 聡明なあなたも、推論や噂など事実でないことをたくさん口にしているはずだ。

 そもそも事実しか言わないのであれば、コミュニケーションが成り立たない。マルクス・アウレリウスもそんなことを言っているわけではないはずだ。

 ただ、この言葉で思い出すのは、事実と推論を意図的に混ぜる人たちである。

 たとえば、事実を最初に述べながら、「私は事実を言っています」と強調しつつも、最後にちょこっと、自分の主張推測の域を出ない説、伝聞による疑惑、単なる噂などをほのめかす。

 もちろん、明らかな嘘ではないし、ただちに「事実ではないことを言っている」とは言えない。

 SNSを見ていても、ワイドショーでも政治家のコメントでも、このようなやり方で事実をよそおった怪しい情報を広めている人がいると感じる。

 しかし、こうして印象操作をするのは、絶対に「正しいこと」ではないし、こんなことをしていると人は離れていくだろう。

自分がやろうとしているのは「正しいこと」か?

 ところで、「正しくないことはせず、事実でないことは口にしない」ようにしようと思ったら、「何が正しいことだと言えるのか」「何が事実だと言えるのか」という問題にぶち当たることになる。

 マルクス・アウレリウスの思いはここにあるのではないだろうか。

 いま自分がやろうとしているのは正しいことか?

 事実を言おうとしているのか?

 そう自分に問えと言っているのだと思う。

 いつも自分に問いを投げかけられるようにしておくには、言葉は短いほうが良い

 短くストレートで、心に持っておきたくなる名言だ。

(本原稿は、ブリタニー・ポラット著『STOIC 人生の教科書ストイシズム』〈花塚恵訳〉に関連した書き下ろし記事です)