米AI開発、秘密にすべきかPhoto:Bloomberg/gettyimages

 ティム・デットマーズ氏は、世界の注目を集める中国の人工知能(AI)スタートアップ企業ディープシークの躍進に貢献した、最先端にいるAI科学者の一人である。

 だが、ディープシークのAIモデルを開発した中国の人たちとは一度も接触したことがない。

 かつて米メタ・プラットフォームズで働き、現在はシアトルにあるアレン人工知能研究所の研究者であるデットマーズ氏は、比較的性能の低いハードウエアを使用してAIモデルを訓練し、実行する新しい方法を開発した。2021年に自身の研究について発表しており、ディープシークが最近になってモデル構築の方法に関する論文を発表した際、デットマーズ氏は引用文献の中に自身の論文を発見した。彼らは同氏の研究論文を熱心に読んでいたのだ。

 AI研究のコミュニティーには、新たな飛躍的進歩を論文で発表し、誰でも使用できるようモデルを公開する文化がある。これはマーク・ザッカーバーグ氏の下でメタが採用しているアプローチであり、ディープシークも同様だ。また、注目を集めているフランスのAIスタートアップ、ミストラルや、他の多くの最先端AI企業・研究機関を動かしている価値観でもある。

 公開されたディープシークの最新AIモデルで分かったのは、こうした知識の共有によって、ディープシーク――世界中のエンジニアが開発した技術を活用したと明らかにしている――が、はるかに豊富なリソースを持つ米国のAI企業を追い抜くことを可能にしたということだ。このことは、米国人が自ら達成した飛躍的進歩について、どの程度共有すべきかという重要な議論に拍車をかけている。