【オピニオン】「トランプ氏の先」を見るのは難しいPhoto:Anadolu/gettyimages

 カナダとメキシコが米国の親友ではないと誰が言うのだろうか。カナダとメキシコは3日、迅速に行動してドナルド・トランプ米大統領を自滅的な関税を巡る酒浸りから解放し、丸1日にわたった市場のブーイングに彼がいら立つことさえさせなかった。

 しかし、米国は自らの信頼性を損なっていないだろうか。トランプ氏は自身の大統領1期目に北米自由貿易協定(NAFTA)を破棄し、新たな条約を押しつけた。そしてそれも破棄したばかりではないか。ただ、将来の大統領はトランプ氏ではない。痛い目に遭ったトランプ氏も、より慎重になる可能性が高い。

 報道機関からのリークで、トランプ氏が3日の市場の反応にいかにおじけづいたかが明らかになるだろう。こうした賭けから生じるリスクは、紙製の帽子と紙吹雪で祝うような迅速な問題解決につながるものではなく、貿易面で泥沼および消耗戦を招く類いのものだ。トランプ氏の関税が消費者物価に即座に大きな影響をもたらすことはなかっただろう。だが、関税にこだわっていれば、他国が同様の対応をしていたと思われ、その結果、米経済の効率と生産性が永続的に低下していた可能性がある。米国は徐々に貧しくて弱い国になり、最終的にはより強い国の餌食になっていただろう。

 これは最悪のケースだ。もっとあり得るのは、さらに多くの産業が米国の木材・砂糖・自動車製造などの業界と似たような状況に陥る事態だ。これら全ては政府の監督下に置かれ、そのビジネスモデルは長期間の保護主義によって支えられている。以下はその好例だ。トラックに25%の関税を課したことで、米三大自動車メーカー(ビッグスリー)はピックアップトラックメーカーとなり、それ以外の車のほとんどで赤字を出すようになってしまった。

 今週、貿易理論に関するトランプ氏の誤解を正すために、ブログに長文の投稿をした人たちが救われることを願いたいが、トランプ氏は気にしていない。彼が米国の最大級の貿易相手国にけんかを仕掛けたのは、相手国の最善の選択肢が常に、米国に屈服して彼が望み通りに強さと勝利を見せびらかせるようにすることだと計算しているからだ。