就任初日から「米国第一主義」全開
“歴史的大統領”への船出?
トランプ第2次政権が1月20日に発足、就任演説でトランプ大統領は、建国以来の米国の歴史を振り返りながら、「黄金時代が始まった」と宣言した。
極寒のために室内に会場を移して行われた就任式で、歴代大統領や米議会幹部らが時に拍手をまじえながら、演説を聞き入る風景は、8年前の第1次政権当時は異端視されたトランプ氏が、いまや米国政治の本流になりつつあることを象徴するようなイベントだった。
トランプ氏は、「米国第一主義」による外交や安全保障、経済政策を語り、就任初日から、移民の送還や規制強化で米南部に軍を派遣することやパリ協定離脱を表明、エネルギー緊急宣言を発して、化石燃料の増産、電気自動車(EV)普及の補助金撤廃を進めるなど、矢継ぎ早に大統領令に署名をして、政策大転換を印象づけた。
トランプ氏の姿と重なるのは、同じく共和党で40年前の1985年に第2次政権をスタートさせたレーガン氏だ。レーガン氏は2期8年の任期を通じて「小さな政府」を推進、米国の政治に大きな足跡を残した。
トランプ氏も、前回大統領選の敗北から復活を果たし、米国第一主義を後世にまで定着させ、レーガン氏に劣らないレガシー(遺産)を残すことを考えているようにもみえる。
一方で、トランプ氏の威圧的な姿勢や大統領権限を極限まで行使しようとするやり方は、「帝王的大統領」と呼ばれ、ウォーターゲート事件にまみれたニクソン大統領の幻影がちらつく。
ニクソン氏にも米中国交正常化などの成果があるし、一方でレーガン氏にも「双子の赤字」や貧富の格差拡大などの「負の遺産」はあるが、議会に弾劾されて2期目の途中で辞任に追い込まれたニクソン氏の方が後世の評価は明らかに低い。レーガン氏の再現を目指す政治家は多いが、ニクソン氏を目標とする政治家は希少だろう。
トランプ氏は何を残すのか。レーガン氏のように“歴史的大統領”となるのか、それともニクソン氏のように“異端の大統領”に追いやられるのか。米国の今後を左右する問いかけだ。