トランプ大統領がカナダとメキシコに対する関税を発表する前から、一部の米国企業にとっては鉄鋼価格が上昇し始めていた。経営幹部らはさらなる値上げに備えていると述べている。
トランプ氏は1日、メキシコとカナダからの全輸入品に4日から25%の関税を課すと発表した。3日には、両国との協議が始まったため、発動を1カ月間保留すると述べた。
関税が実施されれば、外国産鉄鋼の価格が実質的に引き上げられ、米鉄鋼メーカーは価格決定力が強化される上、値上げも可能になると予想される。
ロブスターやカニの捕獲に使われるワイヤフェンスや溶接メッシュを製造するリバーデール・ミルズ(マサチューセッツ州)のジェームズ・ノット最高経営責任者(CEO)は、2週間前に国内の鉄鋼線材サプライヤーから価格を引き上げると通知されたと述べた。
ノット氏によると、同社は線材の約80%をカナダから購入している。これは、サウスカロライナ州やテキサス州、イリノイ州の工場から購入するよりも東海岸への輸送コストが低いためだ。鉄鋼はリバーデールの生産コストの3分の2を占めており、価格上昇が上昇すれば国外の競合他社に対して不利な立場に置かれることになると同氏は述べた。
「米国産の鉄鋼を使いたいが、適正価格で購入できなければ競争できない。米国の鉄鋼価格は最も高い」
カナダとメキシコは米国にとって最大の鉄鋼供給国であり、米国鉄鋼協会と国勢調査局によると、2024年の全輸入鉄鋼の35%を占めている。この2カ国は、第1次トランプ政権下で2018年に課された鉄鋼・アルミニウム関税の対象に含まれていたが、後に米国との新たな自由貿易協定の交渉と引き換えに免除された。
米鉄鋼会社の幹部たちは熱心な関税の支持者であり、トランプ氏に第2次政権でも再び関税を発動するよう求めてきた。また関税免除と無関税輸入枠の撤廃も求めている。こうした例外措置のために不当に安価な鉄鋼が米国に流入し、鉄鋼市場が弱体化しているとの主張だ。
トランプ氏が1日に発表した関税には、中国からの輸入品に10%の関税を課すことも含まれていた。トランプ政権はメキシコ・カナダ・中国に対する関税が、米国に流入する不法移民や合成麻薬フェンタニルの取り締まりを促すのに役立つと述べている。カナダとメキシコは報復関税で対抗すると表明しており、北米で貿易戦争の舞台が整いつつある。