仕事が遅い部下がいてイライラする」「不本意な異動を命じられた」「かつての部下が上司になってしまった」――経営者、管理職、チームリーダー、アルバイトのバイトリーダーまで、組織を動かす立場の人間は、悩みが尽きない……。そんなときこそ頭がいい人は、「歴史」に解決策を求める。【人】【モノ】【お金】【情報】【目標】【健康】とテーマ別で、歴史上の人物の言葉をベースに、わかりやすく現代ビジネスの諸問題を解決する話題の書『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)は、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、伊達政宗、島津斉彬など、歴史上の人物26人の「成功と失敗の本質」を説く。「基本ストイックだが、酒だけはやめられなかった……」(上杉謙信)といったリアルな人間性にも迫りつつマネジメントに絶対活きる「歴史の教訓」を学ぶ。
※本稿は『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。

北条政子の伝説のスピーチに学ぶ! リーダーが人の心を動かす話し方の極意Photo: Adobe Stock

北条政子の生涯と鎌倉幕府の確立

 北条政子(1157~1225年)は、平安時代末期から鎌倉時代初期の人物で、伊豆(静岡・伊豆地方)の豪族の娘として生まれる。当時は平家が繁栄している一方、源氏は没落していた。そんななか、その源氏の流人であった源頼朝(1147~1199年)と恋仲となり、周囲の反対を押し切って頼朝の妻となる。頼朝が反平家で挙兵した後は、平家打倒や鎌倉幕府の創始を陰ながら支え続ける。
 頼朝の死後、長男の頼家(1182~1204年)が鎌倉幕府第2代将軍となるが、政子の実家である北条家と対立したため、頼家は将軍の地位から追放されたうえ、伊豆の修善寺にて非業の死を遂げる。そこで次男の実朝(1192~1219年)が第3代将軍となり、朝廷での官位も右大臣という高位までなったが、頼家の子の公暁(1200~1219年)に鎌倉の鶴岡八幡宮で暗殺される。
 頼家・実朝といった息子のほか、長女であった大姫(1178~1197年)にも先立たれている。実朝の死後、政子は「尼将軍」として弟の幕府執権・北条義時(1163~1224年)とともに幕府の政治を進めたが、京都の朝廷の後鳥羽上皇(1180~1239年)と対立を深め、承久の乱(1221年)で朝廷と戦うこととなる。承久の乱は鎌倉幕府の勝利で終わり、その後1800年代まで続く武家政権の基礎をつくる。

北条政子のプレゼンに学ぶ、感情に訴える手法

 北条政子のプレゼンは、初めから本題に入らず、これまで親族を失ってきた悲しみを伝え、これから弟の義時も失うことになれば、さらに悲しみを味わうことになると感情に訴え、武士たちの同情を誘うところから始まっています。

 このように、初めから本題に入らず、リーダー自身の人間味を感じられる話で感情に訴えかけ、部下の気持ちをひきつけることは有効です。

聞き手の心をつかむ工夫

 プレゼンをするとき、その場の主体は話し手であり、聞き手は受け身にならざるを得ません。つまり、聞き手は話を聞いても聞かなくても、その場は成立してしまうのです。

 そんななかで、リーダーが初めから進むべき方向について淡々と話しても、聞き手である部下の心には響かないでしょう。

本題に入る前に感情を揺さぶる

 部下たちが前向きに話を聞く気持ちをつくるためには、本題に入る前にリーダーの人間味が感じられるような、メンバーの感情を揺さぶる話をしてみましょう。

 たとえば、これまで直面した困難で苦しかったことや、それを乗り越えるために得られた協力に対する部下たちへの感謝などがあります。

経営方針発表会での効果的な伝え方

 私は、クライアント企業が次年度の経営計画を社員向けに発表する「経営方針発表会」を開くとき、冒頭に昨年度の振り返りから入ることをおすすめしています。

 淡々と昨年度の数字を振り返るのではなく、うれしかったことや苦しかったこと、またそれらを乗り越えられたのは社員全員のおかげだったことを感謝の気持ちとともに伝えるのです。

リーダーの想いが共感を生む

 そこにリーダーとしての想いが入れば入るほど、部下たちの気持ちはひきつけられ、その後の話にも傾聴しやすくなります。

※本稿は『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。