「仕事が遅い部下がいてイライラする」「不本意な異動を命じられた」「かつての部下が上司になってしまった」――経営者、管理職、チームリーダー、アルバイトのバイトリーダーまで、組織を動かす立場の人間は、悩みが尽きない……。そんなときこそ頭がいい人は、「歴史」に解決策を求める。【人】【モノ】【お金】【情報】【目標】【健康】とテーマ別で、歴史上の人物の言葉をベースに、わかりやすく現代ビジネスの諸問題を解決する話題の書『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)は、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、伊達政宗、島津斉彬など、歴史上の人物26人の「成功と失敗の本質」を説く。「基本ストイックだが、酒だけはやめられなかった……」(上杉謙信)といったリアルな人間性にも迫りつつ、マネジメントに絶対活きる「歴史の教訓」を学ぶ。
※本稿は『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。

経営コンサルタントが歴史に学んだリーダーシップに欠かせない1つのことPhoto: Adobe Stock

難題解決をあきらめない
姿勢を歴史に学ぶ

歴史上の人物を数多く学んで感じるのですが、偉人として名前を残すような人は、どんな難題であっても解決することをあきらめません。解決の手段がないかと考え続け、挑戦し続けるのです。

当時の最新兵器である手榴弾のような「焙烙火矢」との対抗をあきらめず、船の形状にイノベーションをもたらした織田信長だけでなく、父親に反対されながらも薩摩藩の新規事業を立ち上げた島津斉彬、犬猿の仲だった長州藩と薩摩藩の関係を経済連携によって親密にした坂本龍馬――いずれも、目標の実現に向けて粘り強く問題を解決しようとしたことが共通点です。

経営危機に陥った会社
をどう助けるか?

そうした歴史に学んで、私は仕事上で難題がふりかかっても、「これは解決できない」とすぐにあきらめるのではなく、「どうにかして解決できる方法はないものか」としぶとく考えるようになったと思います。

これまで直面した難題のなかで印象的なのは、経営危機に陥った会社の資金調達を支援したときのことです。

厳しい資金繰りで1年以内に会社が傾いてしまうことが予測されながら、融資してくれる金融機関が見つからない状況が続きました。

現状の見直しと
新たな取り組み

社長もお手上げの状態でしたが、私自身は「なんらかの解決方法があるのではないか」と、粘りに粘って金融機関との交渉材料を模索しました。

そのなかで、収益性の改善に向けて、事業の見直しを盛り込んだ事業再生計画を作成。その計画をベースに粘り強く金融機関と交渉したのです。

この事業再生計画では、コストの適正化など事業再生の基本的なとり組みに加え、これまでの事業にはなかった商品開発や新規市場開拓を盛り込みました。

前例にとらわれず
柔軟に発想する

交渉は難航を極めましたが、事業再生計画を何度も見直したことによって、最終的には資金調達に成功

資金繰りを改善して倒産を免れたとともに、このときに作成した事業再生計画をもとに、収益を改善することにつながりました。

あきらめずに難題を解決する共通のポイントは、前例にとらわれず、柔軟に発想することです。織田信長、島津斉彬、坂本龍馬、みな前例にとらわれていません。

実現したいことへの強い信念

事業再生計画を作成したときもそうですが、難題を解決するには前例にとらわれず、柔軟に考えるしかありません。うまくいかなければ、その都度、見直して前進すればいいと割り切ることです。

また、そもそも歴史上の人物がどんな難題であっても解決することをあきらめないのは、その難題解決の先の世界を何がなんでも実現したいという信念があるからです。

織田信長は天下統一、島津斉彬は富国強兵、坂本龍馬は薩長同盟など、それぞれが実現したい世界に対して強い信念をもっていたからこそ、難題を粘り強く解決しようとしたのです。

何がなんでも解決したい

私自身、クライアント企業の事業再生をお手伝いするときには、技術力がある会社を存続させ、その会社が未来にわたってよい製品を世の中に届けてもらいたい、また多くの従業員と家族の生活を守りたいという想いがあります。

難題解決の先の世界への信念があるほど、何がなんでも解決したいと思うものです。こうした姿勢が評価されてか、手前みそな話になりますが、「まわりからみると難しいと思う問題も、軽々と乗り越えますね」と評価してくださる経営者もいます。

もちろん、歴史上の偉人と比べるとまだまだですが、難題に直面しても、あきらめずにとり組んでいくことをこれからも心に刻みたいと思います。

※本稿は『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。