これまで何度も述べてきたことですが、「うつ」状態とは一口に言って、この長期にわたる「頭」の独裁に「心」(=「身体」)がたまりかね、反逆のストライキを決行した状態です。ですから、まずは「何もしたくない」という抗議の主張が強く行なわれるのは、当然のことなのです。

沈黙してしまった「心」を
目覚めさせるプロセス

 「心」(=「身体」)のストライキによって、「頭」の支配体制がダメージを受け、その結果、ようやく「頭」は「心」の声に耳を傾けざるを得なくなります。

 そこで「頭」は「心」(=「身体」)に向かって、「本当は何がしたいの?」という質問を向けるのですが、これに対して「心」(=「身体」)は何も答えてくれません。なぜなら、この質問が不適切だからです。

 長い間「頭」によって弾圧され、発言を許されなかった「心」(=「身体」)は、その間にいわば退化させられてしまったようなもので、これが再び動き出すためには、幼児の「自我の目覚め」に相当するプロセスをもう一度経ることになります。

 幼児は、2~3歳頃に自我が目覚めはじめると、親の指示にことごとく「イヤイヤ」を言うようになります。「寝なさい」と言えば「寝ない!」と返し、「寝ちゃダメよ」と言えば「寝る!」と言うのです。これを「イヤイヤ期」と言うのですが、これが自己主張の初期の形態です。

 この時期の主張は「指示に従いたくない」という一点だけなのであって、主張内容における一貫性はあまりありません。しかし、この「イヤイヤ期」を経て徐々に、一貫性を持った「~したくない」が表われて来て、やがて「~したい」という高度な自己主張が表明される段階に移行していくのです。

 一度退化させられた「心」(=「身体」)は、はじめのうちしばらくは、この「イヤイヤ期」に相当する状態になるのです。この時期には、とにかく「頭」の指示に対して、「心」(=「身体」)はことごとく「イヤ!」と言います。ですから、この時期に「何がしたいの?」といくら尋ねてみても、何も期待する答は返って来ません。

徐々に「~したくない」が絞り込まれていく

 「イヤイヤ期」にあった「心」(=「身体」)は、段々にやみくもな「イヤ」ではなく、その対象を絞り込んでいくようになります。人と会うのも外出するのもすべて「イヤ」であった状態から、特定の相手や場所・状況に対する嫌悪感や拒否反応に限定されていくのです。