老後に「孤立する人」と「周囲に歓迎される人」一発でわかる〈話し方〉の決定的な違い写真はイメージです Photo:PIXTA

脳の老化によって柔軟さを失い、知らず知らずのうちに現役世代の足を引っ張る「老害」化が進んでしまう「老害脳」。周囲の人を困らせる老害脳を防ぐためにはどうすればいいのか。職場で老害化しないために意識的にやるべき習慣を、脳の専門家が解説する。※本稿は、加藤俊徳『老害脳』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を抜粋・編集したものです。

老害脳の克服が未来を救う
世代間協力で社会の再生を

 残念ながら、すでに戻れないレベルで脳が老化し、完全な「老害脳」と化してしまった人は、元に戻ることは難しいでしょう。自分が老化していると認識すること自体ができないのですから、そもそも本人に克服したいという考えが生まれず、周囲も対策の打ちようがありません。

 一方で、自分の脳の老化を心配できている人たちや、まだ脳が老化する年齢ではないが「老害脳」の被害を受け、それをどうにかしたい、また、自分は同じようにはなりたくないと思っている人たちは、ともに「老害脳」化を遅らせるための努力をすることで、お互いのメリットを増やせるはずです。

 互いの協力で社会全体の「老害脳」化を防ぐことこそ、日本が目指すべき未来であり、また日本でこそ効果が高いのではないかと思うのです。

 その先に、人口減少の中でも世代間を超えて協力、協業していける道があるはずです。人口が減れば、社会全体としてできることが少なくなってきます。まして高齢者の数がさらに増えていく中で、経済活動に参加できない人の比率はどう考えても増える道しか見えません。その理由の1つが、まさに脳の老化であり、さらにその中で「老害」と化した人は現役世代の足を引っ張りかねません。

 こうした足を引っ張り合う保守的で狭い組織内での「老害」の積み重ねは、結局、企業活動や政治を通して、今後の日本社会の成長を阻害するリスクとなるしかありません。

肩書を越えた交流が未来を変える
世代を超えた縁が社会を豊かに

 ではどんな社会になればいいのでしょうか。極端に言えば、たとえば60代となった私に対して、今年社会人になったばかりの若い方が、フランクに話しかけられるような社会です。私ももしそのままアメリカに居続けていたならば、最初にあいさつを交わしたあとは、40歳年が離れていようと、先生でもドクターでもなく、「トシ」とニックネームで呼ばれたいところです。

 私の研究に好奇心を持ってくださったり、論文などに敬意を払ってくださることは大変光栄です。ただ、その対象はあくまで研究や論文なのであって、私という人間に対する無条件の賞賛ではありません。

 加藤は医師だから、博士だから、社長だから、年上だから……といって、自動的に、無意識に敬意を払うのは、実は交流を深めるきっかけを壊したり、本音を話し合う機会を失ったりしている残念な振る舞いだと思います。