ほとんどのケースで、前述したファスティングの効果を得るのに、食べ物を完全に断つ必要はない。2014年、僕は断続的ファスティングに苦もなくゆっくり慣れていけるようにするための、特別な方法について書いた[*5]。
それを実践した人たちが落とした体重を合計すると、45万3592kgになる。16:8ファスティング(編集部注:16時間ファスティング)に似た方法だが、決定的に違う点がある。
僕のやり方では、固形食を摂らない期間は、朝に「完全無欠(ブレットプルーフ)コーヒー」を飲む。これには脂肪が含まれているので、いつもの食事を断っても空腹を感じず、インスリン値とタンパク質代謝を抑制し続けることができる。
「バターMCTコーヒー断続的ファスティング」なんて気が利かないと思い、その方法を「完全無欠断続的ファスティング」と名づけてから10年以上がたつ。その有効性により時を経ても生き残り、僕の解説動画の再生回数は10万回を超える。
「完全無欠断続的ファスティング」では、摂取する脂肪の種類が重要だ。コーン油、大豆油、キャノーラ油、種子油には、炎症をはじめ望ましくない結果を引き起こす不安定な脂肪が含まれている。
牧草飼育(グラスフェッド)バターと中鎖脂肪酸(MCT)オイルのほうがうんと体にいい(MCTはmedium-chain triglycerideの略で、相対的に小さいため体に速やかに吸収され、エネルギーになりやすい脂肪分子のこと)。「完全無欠コーヒー」に入れるこれらの脂肪は、この10年僕の食生活になくてはならないものだった。
「完全無欠断続的ファスティング」なら、断食のインスリン安定化とオートファジーのメリットを有効にしつつ、それ以外のあまりうれしくない体への影響、そう、断食を始めたばかりでまだ体が適応できていないときに感じやすい、空腹と怒りに対処することができる。
それを引き起こすのは「爬虫類脳」と言われる脳の領域だ。爬虫類脳と格闘して自制心を保つのに多大なエネルギーを費やしてもいいし、一杯のクリーミーなコーヒーでそれを黙らせ、もっとだいじなことのためにエネルギーをとっておいてもいい。いずれにせよ、体にとっては断食したことに変わりはない。
僕が研究と実験を何度も重ねて編み出した、誰にでも効果的な方法でファスティングを始めることをおすすめする。朝起きたら、一杯の「完全無欠コーヒー」を飲もう。レシピはブラックコーヒーにグラスフェッドバター大さじ1杯、「C8 MCTオイル」小さじ1、2杯。どんなラテよりもおいしいはずだ。

【参考文献】
[*1] Danielle Glick, Sandra Barth, and Kay F. Macleod, "Autophagy: Cellular and Molecular Mechanisms," Journal of Pathology 221, no. 2( May 2010): 3-12.
[*2]Mehrdad Alirezaei et al., "Short-Term Fasting Induces Profound Neuronal Autophagy," Autophagy 6, no. 6(August 2010): 702-10.
[*3]Takayuki Teruya et al., "Diverse metabolic reactions activated during 58-hr fasting are revealed by nontargeted metabolomic analysis of human blood," Scientific Reports 9, no. 854 (2019).
[*4] Maria M. Mihaylova et al., "Fasting Activates Fatty Acid Oxidation to Enhance Intestinal Stem Cell Function During Homeostasis and Aging," Cell Stem Cell 22, no. 5 (May 2018): 769-78,(18)30163-2.
[*5] Dave Asprey, The Bulletproof Diet: Lose Up to a Pound a Day, Reclaim Energy and Focus, Upgrade Your Life( New York: Rodale Books, 2014)(デイヴ・アスプリー、『HEAD STRONG シリコンバレー式頭がよくなる全技術』、栗原百代訳、ダイヤモンド社、2015年)