新たな学校選びの指標
「家から近い」「通いやすい」
そんな中で「家から近い学校を選ぶ」人が増えているのは大きなトレンドと言えます。以前と比べ、多少の無理をしてでも遠方の学校を選ぶ人は確実に減少しています。近年の異常気象(猛暑)や地震などの自然災害への懸念もあるでしょう。また、各学校が進学実績だけでなく、学校独自の魅力を効果的に発信できるようになってきたことも、この傾向を後押ししています。
ただし、依然として一部の受験生は、難関大学、特に東京大学への合格実績を重視して中学校を選択する傾向が根強く残っているのも事実です。例えば2024年、聖光学院は東大合格者数が23年の78名から大幅に増加し100名(うち現役86名)。それと連動するかのように、今年の中学受験の出願者は、752名(2025年度第一回入試)に。昨年の691名(2024年度第一回入試)より一段と人気が上昇していることが分かります(*)。
一方、麻布は東大合格者数の減少と共に人気がやや低下しました(2024年東大合格者数55名、うち現役38名、2023年同79名うち現役53名)。2025年中学入試出願者数は761名で、2024年同826名、2023年同918名よりも減っています(*)。
麻布の自由闊達な校風は、私は非常に好きなのですが、それよりもきめ細やかな面倒見の良さをもって、東大への進学をサポートしてほしいと考える保護者も増えているのでしょう。このように、学校の偏差値や人気度が東大合格者数に比例する現象は、一定の保護者のなかで、今なお無視できない要素となっているのです。
もちろん大学進学実績、特に東大合格者数は、確かに学校評価の一つの指標ではありますが、それはあくまで評価要素の一つでしかありません。実際、難関校ならどの学校でも、数%の生徒は本人の努力次第で東大に進学しているのが現状です。
奇問は減り
社会的関心問う
入試問題の傾向としては、全般的に、社会への関心を高めるような内容が増えているという特徴がありました。例えば、国語の文章では多様性やマイノリティの問題を扱うものが増え、社会科では女性の社会進出や政治献金の裏金問題、少子高齢化など、現代社会の課題を題材とする出題が目立っています。
問題の難度が変わったわけではありませんが、重箱の隅をつつくような技巧的な問題、「入試問題のための入試問題」的な意味での難問や奇問の類はめったになくなり、ある種の良問が揃ってきているのも近年の傾向です。
多くの学校で入試問題作成の技術が上がっており、学校名を隠して問題だけを見ると、中堅校と難関校の区別がつきにくくなってきているほどです。これは、SNSなどで「小学校で習う範囲を逸脱している珍問」「一般的には○○率を求めるときの分母は△△でなければおかしい」などの指摘をする、「入試問題警察」とでもいうべき外部からの評価を学校側が意識するようになったことも影響していると考えられます。