商工中金が事業再生の専門人材育成に本腰、1000社が関わる「ZK計画」とは?写真はイメージです Photo:PIXTA
*本記事はきんざいOnlineからの転載です。

事業再生分野における専門人材不足

 今回は、昨今金融業界全体で不足する事業再生分野の専門人材をいかに育成するか、当金庫の組織的な取り組みや研修手法を例に解説する。

 政府は昨年3月、「再生支援の総合的対策」を主に金融機関向けに発出した。また昨年4月には、金融機関による資金繰り支援にとどまらない、事業者の実情に応じた経営改善や事業再生支援について一層の推進を図るため監督指針を改正した。同指針では、(1)経営改善・事業再生支援等の本格化への対応、(2)一歩先を見据えた早め早めの対応の促進、(3)顧客に対するコンサルティング機能の強化が求められている。

 当金庫の事業再生の専門部署である経営サポート部では、各地域で事業再生・経営改善支援を推進していくため、年間延べ100程度の地域金融機関に対して、専門部署との意見交換やセミナー開催を行っている。そこでは、監督指針改正や企業倒産、私的整理案件の増加などを背景に、事業再生の専門人材育成を喫緊の課題とする声が非常に多く挙がる。

 事業者を取り巻く経営環境は、物価高や人手不足、デジタル化の進展などを背景に、より複雑で高度な対応力が求められる時代となっている。それらを総合的に支援する事業再生支援の担い手が、今まさに求められている。

多様な経営課題に取り組む経営サポーター

 当金庫は、事業再生・経営改善支援を二十余年行っており、過去にはDDS(デット・デット・スワップ)でも国内1号案件を手掛けるなど先駆的に取り組んできた。現行の中期経営計画では、事業再生支援を他行と差別化できる分野の一つと位置付け、金融支援と本業支援を組み合わせたサポートに取り組んでいる。

 こうした取り組みを組織的に実践していくには、顧客とじかに向き合う営業店が、日常的かつ継続的な関係を通じて予兆を含む経営状況や課題などを適切に把握するとともに、タイムリーに本部と共有し、一体となって質の高い打ち手を提供していくことが欠かせない。