地銀・信金で広がる脱「経営者保証」、急増する「コベナンツ融資」の期待と課題Photo:PIXTA
*本記事はきんざいOnlineからの転載です。

 政府の「経営者保証改革プログラム」の成果もあり、足元で経営者保証に依存しない融資の割合は大きく上昇してきた。さらに金融庁は監督指針を改正し、M&A等を把握した場合の対応や、既存の根保証契約に関する説明を新たに義務付ける。そうした中で広がりを見せているのが、コベナンツ(特約)を活用した脱経営者保証の取り組みだ。企業へのモニタリング強化のほか、手数料収益につながる点もメリットで、経済合理性を確保したかたちでの脱経営者保証が期待される。

早期対応が求められる根保証契約を巡る説明

「保証人に対する説明等の対応を早急に行っていただきたい」――。8月30日に確定した監督指針の改正を巡り、金融庁は早期の対応の必要性をこう強調した。これは監督指針改正に盛り込まれた「既存の根保証契約に関する保証人への説明」について、パブリックコメントで寄せられた意見に対して見解を示したものだ。

 今回の監督指針の改正では、一部の既存の保証契約について「経営者保証に関するガイドライン」に基づき、主債務者・保証人に対して説明を行うよう求める。具体的には、(1)M&A・事業承継など主たる株主等が変更になることを金融機関が把握した保証契約と、(2)(経営者保証に関する前回の監督指針改正の施行前である)2023年3月以前に契約した根保証契約が対象となる。

 このうち(2)は、前回の監督指針改正の対象外ではあるものの、金融庁は昨春以降、早期に説明を行うよう求めてきた。ただ今年3月時点の状況を調査したところ、一部の金融機関から「説明を未実施の先が過半」「説明の実施状況を把握していない」との回答があったという。

 既存の根保証契約がある場合、最長5年間にわたって、新たな融資を受けても経営者保証ガイドラインに基づく説明がなされない恐れがある。そこで金融庁は、10月1日に適用される改正後の監督指針に基づき、来年3月までに説明等の対応を完了するよう求めている。

 もっとも、こうした新たな要請は、前回の監督指針改正で新規融資における経営者保証ガイドラインに基づく説明が義務付けられ、「脱経営者保証」の取り組みが進んできたことの裏返しだ。23年度には民間金融機関の新規融資に占める経営者保証に依存しない融資の割合は47.5%(前年度は33.9%)まで大きく上昇した。

 金融庁は7月31日には、その個別金融機関ごとの実績と、各金融機関の「取組方針」の公表状況(23年度実績)も取りまとめて発表した。各県のトップ地銀でも新規融資に占める経営者保証に依存しない融資の割合は80%台から30%台までバラつきがあるものの、全体として取り組みが底上げされていることが見て取れる。