野村総合研究所(NRI)が、地域金融機関などで処理される取引先企業の決算書に関する業務を分析した。その内容は、「東京・ハワイ間」に及ぶ2000万枚の紙を、毎年消費しているという衝撃的なものだった。連載『橋本卓典の銀行革命』の本稿では、NRIのレポート内容を詳しく見ていく。(共同通信編集委員 橋本卓典)
決算書をめぐる「不都合な現実」
「地方銀行など地域金融機関が中小企業から毎年入手する決算書の8割強が「紙」であることが、膨大な業務負担をもたらし、中小企業の生産性向上支援に割くべき貴重な時間を奪っている」――。
野村総合研究所の(NRI)山田彰太郎エキスパートリサーチャーが2024年11月に公表した調査レポートの内容は衝撃的だ。金融庁や中小企業庁でも話題となっている。
紙の決算書を入手するために、金融機関の職員は毎年走り回る。そして、持ち帰った決算書を複合機でひたすらスキャンし、発生する読み込みエラーをその都度、手入力で修正する。まさしく「地獄の作業」を、延々と繰り返しているのだ。
紙を“標準”としていることが、人を仕事した気にさせ、中小企業、地域金融機関の生産性をどれほど押し下げているのか。調査結果を手がかりに、「不都合な現実」に分け入ってみよう。