
激変期に突入する中小企業の経営環境
中小企業経営を取り巻く環境は、産業構造変化・物価上昇・労働力不足・人件費急騰が一挙に押し寄せる「激変期」に突入し、事業再生・経営改善支援も多大な影響を受けている。「失われた30年」とは一変したこうした環境の劇的変化は旧態依然とした事業経営の存続を困難にし、企業価値の毀損が進みやすくなっている。
特に地方圏では、中核企業の撤退を新たな事業者が埋める循環が弱まっており、金融機関が債権者の立場にとどまらず、より踏み込んだ経営改善ソリューションの提供に取り組む必要性が高まっている。
当金庫ではこうした状況を踏まえ、既存の金融手法にこだわらない取り組みを行っている。「事業性」をファクトに基づき正確に把握・考察し、長期経営戦略の構築・実践に参画するなど、課題解決のための実践的なソリューションを提供している。
これにより、コーポレートガバナンスを機能させることを特に意識して取り組んでいる。
金融支援を主とした従来の手法では、いつまでも経営者は金融機関を「債権者」としか認識せず、パートナーとして認めてもらえない。こうした膠着状態を打破したいという思いと危機感が、われわれの取り組みの起点となっている。
企業の行動変容を促す事業再生支援
こうしたなか、当金庫では次の六つをテーマに事業再生・経営改善支援を展開している。
●本部専門部署による能動的な支援
当金庫は、地域経済の中で重要な役割を担う企業等を中心に、特に重点支援が求められる顧客(ハンズオン支援先)を約500社選定し、本部の専門部署が能動的に支援している(図表)。全国に点在するハンズオン支援先に対して営業店を介さず、本部が直接支援するのは効率性に難もある。しかし、専門ノウハウの早期蓄積と柔軟に現場の切り回しができる人材育成を両立させることで、スピード感のある企業価値向上を実現させるために、あえて手間をかける体制をとっている。