――はやりのプログラミング教育についてはどう思いますか?
必要ないですね。プログラムを人間がやる必要がなくなるからです。AIがやってしまうので。現在のAIなら、たとえばX(旧Twitter)のサイトをキャプチャーして画像で切り取って生成AIサービスに投げ込むだけでコードにしてくれます。あるいは、「マッチングサイトを作りたい」「そこにはこういう機能が欲しい」といった命令を適切な形で生成AIに投げ込めば、超短時間でプログラムを書いてくれます。
これから必要になるのは、AIが書いてくれたコードにフィードバックをする能力です。そのためにはコンピューターやプログラミングに関する最低限の知識は必要ですが、それも1年も学べば十分です。あとはAIに任せればいい。
大事なのは、受験より実践です。そこで企画力を磨くことです。産業をどう変えたいか。組織をどう変えたいか。どういったサービスを生み出していきたいか。実践をして経験を積むと、社会課題が見えてきて、そういったことに目が向くようになります。早い時期からそういうマインドを育てることが、教育の肝になると思います。
――日本の教育では「家庭と学校の往復」といった場が大半を占めています。
だから、親の役割はすごく大事です。子どもに「外」を見せてあげてほしい。親や子どもがすでに知っている世界「以外」のものを見せてあげてほしい。普段行かないような山や海に行って、自然を体験させてあげることでもいいんです。子どもの琴線に何が触れるかは、ぶっちゃけ分からない。いろいろな体験をさせてあげてください。
とはいえ、親もなかなかそうは踏み出せなかったりしますよね。そうであるなら、親自身もいろいろなことに関心を持って、勉強して、自分が感動したものを子どもに伝えるべきです。
――ライフネット生命保険の創業者・出口治明さんがその文脈で、人と会う、読書をする、旅をする=「人・本・旅」が大切だと提言しています。
まさに、そうですね。知らない世界を手早く得られる。人・本・旅を通じて、自分に内在している感受性や人格に刺激を与えていくことが必要だと思います。
僕は旅の大切さもよく語っているんですけど、先日お会いしたインド人経営者は、「旅は学位だ」と言っていましたよ。その人は、一代ですごい事業を伸ばした人ですけど、「なぜそうできたのですか?」と聞いたら、「旅のおかげだ」と言うんです。旅をすると思考がアップデートされて、新しいアイデアも生まれる。だからその人は、若者に「大学の学位は要らないから旅をしろ」と言っているそうです。