成田修造「スタートアップは日本に残された唯一の希望」#5Photo:DIAMOND

史上最年少(当時)の25歳で上場企業の副社長として企業経営に携わり、現在は起業家、エンジェル投資家として活躍する成田修造さん。実は、若手論客として名高い米イエール大学助教授・成田悠輔さんの弟でもある。両親に頼れない家庭環境だったことから4歳上の兄に強く影響されたという成田さん。「これからの時代は、IT、ファイナンス、起業家精神の掛け算が重要になる」と兄から告げられたことで、考え、実践してきたこととは?(聞き手/ライター 正木伸城)

本連載は、スマートニュースとダイヤモンド・オンラインの特別共同企画です。

日本が停滞した本質的な理由

――成田さんは日本経済の停滞や「失われた30年」をどのように分析していますか。

 日本のプレゼンスは相対的に低下しましたが、欧米諸国でアメリカ以外が伸び悩んでいる状況と見比べても、日本はそこそこ頑張っている。上場企業の純利益で比較すると、僕が生まれた1989年ごろと2020年では3倍くらい伸びているんです。

 ただ、産業構造の変化に対応できなかったことは停滞の原因になったでしょう。1960~70年代は機械産業が伸びて、自動車や家電などが売れた。日本の軍事技術や機械工学が戦後それらの開発に応用されました。その頃の起業家の周りには優秀なエンジニアがたくさんいて、彼らが日本の産業を発展させたと考えています。

 ところが90年代以降はコンピューター産業が圧倒的になりました。ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズら起業家が台頭して、彼らが一大産業を作った。さらにはインターネット産業が、そしてスマートフォン市場までもが拡大した。で、今はAIです。アメリカと中国がうまくそこにシフトチェンジできましたよね。

――逆に、日本は対応がうまくできていない、と。

 変化に乗り遅れました。それに対応する教育への投資もほぼできなくて、人材も企業も育ちませんでした。

 ですが、iPhoneだってAndroidだって日本の技術がさまざまなところに使われています。日本企業がなくなったら製造するのは大変ですよ。そこは国際的にも評価はされている。

 ただ、プロダクトでいうと、国際的にはアメリカや中国にかなり取られています。中国は国内市場がそもそも大きい。彼らは15億人超の市場を持っています。アメリカは、おそらく30億人を超える、英語を使う経済圏で勝負をしている。一方の日本は、かなりの部分を日本語圏、1億人くらいの市場で戦っている。これは不利です。

――「日本はオワコンだ」と日本人自身がやゆすることもあります。成田さんの率直なご意見は?