落ち込む女性写真はイメージです Photo:PIXTA

誰にでも忘れたい記憶がある。失恋の傷、挫折の苦しみ、悔しさに震えた日――。だが、それらの記憶はただ時間がたつだけで消えるものではない。日本一の記憶力を誇る男も例外ではない。『東大式 記憶力超大全』の著者で、記憶力日本チャンピオンになった経歴を持つ青木健さんに「一番忘れたい記憶」を聞いた辛い過去をどのように乗り越え、新たな道を切り拓いたのか。記憶の専門的な視点と実体験を交えながら、忘れたい記憶の「乗り越え方」を考える。忘れたい記憶に苦しめられている人は、解決のヒントが見つけられるはずだ。(構成/田之上 信)

記憶力日本一の男が教える
辛い記憶を忘れる2つの方法

 これまでの人生で、忘れたいと思う記憶が1つや2つ、誰にでもあるのではないでしょうか。悲しい記憶、傷ついた記憶、苦い記憶、つらかった記憶……。

 例えば、かつて恋人と旅行した旅先でけんかをしてそのまま別れてしまったという悲しい記憶があるとしましょう。テレビやネットでその土地の映像を見るだけで、つらい記憶が呼び起こされて、せっかくの楽しい気分で見ていたのに急につまらなくなるかもしれません。

 そんな過去の記憶をどうやって消せばいいのか。楽しい思い出で上塗りしてあげるというのが有効な方法の1つです。

 親しい友人や家族と同じ場所を旅行して楽しむことで、過去の悪い情報が、良い情報で薄められます。

 私にも似た経験があります。以前、台湾で開かれたメモリースポーツの世界大会で、ひどい負け方をしました。1位をずっとキープしていたのに、最後の1種目でまさかの大ミスをしてしまい、4位に転落してしまったのです。優勝どころか、表彰台も逃すというつらい経験をしました。

 その直後は相当落ち込んで、台湾という言葉を聞くだけでもイヤでした。ですが、その後すごく仲のよい友だちと台湾旅行に行き、おいしい食べ物や歴史、文化、現地の人との触れ合いを通して、いまではすっかり台湾が大好きになりました。イヤな思い出を、楽しい思い出で薄めることができたのです。