納得感がないと改善意欲は発生しません。「また叱られている」という感覚に陥るだけです。それを繰り返されると、報連相の場は部下の成長機会どころか、モチベーションを低下させる場になってしまいます。

 ここまで見てくると、「そこまでやる必要があるのか」と疑問を持つ読者がいるかもしれません。「事後報告だけで十分間に合っている「いちいち事前報告までしていては、いくら時間があっても足りない」「そこまですると逆に効率が悪いのではないか」などと感じるのも不思議ではありません。

書影『キーエンス流 性弱説経営』(日経BP)『キーエンス流 性弱説経営』(日経BP)
高杉康成 著

 しかしながら、1分単位で時間や効率を意識しているキーエンスは、ほぼ毎日のように時間を取ってこれらを実践しています。その結果が圧倒的な収益性です。何より、キーエンスの新入社員の成長速度は早く、入社半年で一線に投入できる状態になり、3年もすれば超ベテランと肩を並べるエース級社員が登場します。

 これはキーエンスが、「自身の努力や創意工夫でできるだろうからやらなくても大丈夫」という性善説視点ではなく、「様々な制約や理由でできないかもしれない」という性弱説視点に立ち、事前事後報告の仕組みをつくり上げ、運用し続けているからです。効率をとことん追求する企業が、事前事後報告にひたすら時間をかけている。この事実こそ、事前事後報告の有効性を示していると、筆者は考えています。

【ポイント】
◆事後報告だけでは、「後の祭り」になりがち
◆事前報告の導入ですれ違いを防ぎ、制度を高める
◆事前事後報告は成長を体感させ、成長を早める